1.5
……なんで俺コイツに話しかけとんのやろ。この見た目ももっさくて、鈍くさくて…見るからに女捨ててますみたいなヤツに声掛けとるんやろ。
「お嬢ちゃん、そないなトコに座っとったら、制服が台無しやで?…それに、そないなトコ座っとったら、周りに迷惑やで?」
嫌味ったらしく言ってやった。
…なんでこんなに嫌味ったらしく言うとるんやろ。
…コイツと会うの初めてやないか。
せやけど、なんかイラッとすんのや。
自分は不幸なんですーみたいな、悲劇のヒロインぶってるオーラがめっちゃしとるんや。
ま、もうコイツと関わる事もあらへんやろ。そう思っとったのにコイツは俺のクラス、そして俺の隣の席にやって来た。
「なんや、お嬢ちゃん編入生やったんかいな」
またなんで俺は安城に声掛けとんのやろ。
安城はこちらを見ずに、俯きただ一言『……ごめんなさい…』と呟いた。
声も身体も震えとって、それがまた面白くてドンドンからかうってか苛めたくなる。
俺は必死に笑いを堪えいつものポーカーフェイスのまま冷たくいい放つ。
「自分、謝ってばっかやなぁ…。それに、話しとる時はこっち、見たらどや?…ま、お嬢ちゃんに興味はあらへんし、別にかまへんのやけどな」
顔は前髪で見えへんかったけどきっと泣きそうな顔しとんのやろうな。
っつーか安城前…見えとんのやろうか?
興味あらへんって言ったものの隣に居る安城が観察対象としてはめっちゃおもろそうやったから、授業中もチラチラと見とった。
ガチガチに緊張しとった安城は気づいとらんかったけど。
まぁ、観察だけでええ存在やな。
関わりたくはあらへん。関わったら、めんどくさい事に巻き込まれそうな気がしとる。
隣に居るもっさい女。
初日からクラスは勿論、学校の中でも浮いとる存在の安城がこれからどんなツラい学校生活送るんか、そして安城がそれに堪えられんのか、見物やな。
1.5日目
観察対象
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