天気も気候も安定した海。心地良い太陽の光が燦燦と降り注いでいる中、一人ムスっとした顔で自身が持っている袋を眺めている男が一人、我等が船長、ローだ。





「ロー、何をそんなに怒ってるの?」
「…」





声を掛けるが黙ったままじっと袋を熟視するロー。彼が持っているのは午前中に私があげた色んなチョコが入ってるチョコ袋。バレンタインと言う事もあり、常日頃の感謝と友情の証に作って皆に配った物で皆も喜んでくれたのだが、一人だけチョコ袋を片手に思案顔を浮かべたままずっと黙ったままなのだ。彼の様子に、はあ、と溜息が零れる。




「(全く、何が不満なんだか…)」





自分でも言うのは何だがチョコ自体は美味しい筈だ(伊達にこの船の調理場に立ってはいない)なら何が不満なのか?私にはさっぱり分らない。しかし、このまま黙ってると他のクルーが迷惑するので、再び声を掛けようと息込んだ時。




「……何でベポの方が多いんだ?」
「え?……ああ、チョコの事?」
「そうだ。何で恋人のおれのよりベポのチョコの方が多いんだ」



語尾を少し強めにぎろりと此方を見るロー。うわ、唯でさえ目つきが悪いのに更に迫力が増してるし。けどこれで納得した、つまり彼はチョコ袋の多さに不満があるのだ。




「あのね? ベポは見ての通り体が大きいでしょ?なら当然チョコだって多くなきゃ」
「贔屓じゃねぇか」
「贔屓じゃ無いよ、気配り!」




全く、船長ともあろう者が情けない。納得してない、と視線を送ってくるローに程々溜息が出てくる。これが巷でクールなトラファルガー・ローか。今の姿を世間に見せてやりたい!と、そんな中私とローの前にベポがやって来た。






「何してるの?キャプテン、名無し」
「ベポ。いや、ローがね、自分のチョコが少ないって駄々捏ねてるの」
「駄々なんか」
「キャプテンの?」





そう首を傾け自分のおチョコ袋とローのチョコ袋を比べるベポ。嗚呼可愛いな! ついつい頬も緩まってしまう。例えお前よくも…っという恐ろしい視線を送られ様とも。暫くしてベポは何かを考えるかの様に黙ったがその沈黙は袋を開ける音で破られた。





「ベポ?」
「?」




ガサゴソ。チョコの袋を漁る様に手を突っ込むベポに私もローも?マークを浮かべてしまう。大人しくその動向を見守っているとベポは袋から自分の手を取り出し勢い良く、はいっとローへと差し出した。


差し出された手の中には私がベポにあげたおチョコが。





「キャプテン、オレの少しあげる! そしたら同じ位でしょ?」
「べ、ベポ…っ」





嗚呼なんて良い子! 抱き付いてぐりぐりして良い子良い子したいっ! あまりの良い子さににやける口元も手で覆い隠し密かに悶える私。うん、後でこっそりお菓子を追加してあげよう。


だが、この直後ベポがある爆弾発言を…





「けど、キャプテンってお菓子少なくて駄々捏ねるなんて意外と子供みたいだねっ!」
「!?」
「なっ…!」





何て事を! なんて事を言うの!? ベポ。


確かに子供の様にむすっとしていたのは事実だけど、私はそれを口にすることは無かった。口にすれば言葉にすればその後が碌な事にならないと身を持って知っているからだ!




私は慌ててフォローをしようとローの方を見る、が既に時は遅し。ローは密かに肩を揺らしクククと笑っている。





「ろ、ロー?」
「――確かにベポの言う通りおれは少し子供っぽい様だ。ベポ、悪かったなそれはお前のモンだ、お前が食え」
「え? けどキャプテンは」
「心配すんな。おれは」




−ガシッ、





「うっ!?」





逃走しようとももう遅い。ローの手が私の腕をしっっかりと捕らえる。恐る恐る首をローへと向ければ其処には…にやりと口端を上げたローの顔が…!




−あ、私、終 わ っ た





「子供らしく欲しいモンを盛大に強請るとしよう。ま、尤も最後に強請るのはコイツの方だろうがな」
「いいいいやああああっ!」











(ロー、まだ昼だから! 後でチョコ追加してあげるから! ねっ!?)
(部屋に入れば昼も夜もわからねえ。それにチョコよりお前が食いたい)
(離してえぇぇっ!)







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