例えるのならば真綿でゆっくりと首を絞められる感覚。弧を描く口から吐かれる言葉はじわりじわりと尚且つ確実に染み込んで来る猛毒の様で一瞬でも気を抜けば支配されてしまうだろう。嘘も真実も混ぜ合わせた男、ドンキホーテ・ドフラミンゴと言う男はそう言う男だ。






「それで、今日は何の用? ドフラミンゴ」
「フフフフ、好きな女に会うのに一々理由が無くちゃ駄目なのかよ、嬢チャン」
「冗談はその悪趣味な服だけにしてよ。そのピンクの羽一つでもこの部屋に散らかしたら、簀巻きにして海に沈めてやるから」




勿論重りをつけてね、と付け足せば目の前の男は一際愉快そうに笑う。




「本当に気が強い嬢チャンだ、悪くねぇ! だが」
「!?」
「相手に気をつけねぇと、あっという間にやられちまうぜぇ……?」




ぞくり。耳元で響く低音に背筋が粟立つ。引っ張られた体を離そうとするが腰をしっかりと掴まれ逃げられない。一発ぶん殴ってやろうと拳を握れば奴の大きな手に手首を掴まれた。畜生




「フッフフフ! 恐ぇ恐ぇ、そう猫みてぇに毛を逆立てるなよ」
「いいから離せ、アホミンゴ! でないとアンタの鼓膜……ッ!?」




体が動かない、ドフラミンゴが能力を使った証拠だ。手首と腰から手が離れ、今度は何をするのかと眉を顰め訝げに視線を送れば男は視界の死角に消えた。次の瞬間首に違和感が。




「?」
「ほらよ」
「わっ」




体の自由が戻ったと同時に投げられた手鏡。慌てて受け止め覗いてみると其処には先程とは違い、首に一つのチョーカーが。




ちりん




シンプルに装飾された硝子の小さめな鈴が可愛らしく鳴り存在を示す。




「ちょっと、これ」
「オレからのプレゼントだ。フッフッフ、似合うじゃねぇか。まあ似合って当然か、特注だからな」
「……これじゃまるで」
「猫みてぇな嬢チャンにはピッタリだろ?」





満足気に笑う男の指がちりんと鈴を鳴らす。

怒声を浴びせ様としたが満足したのか機嫌の良さそうな男の表情を見て怒鳴る気も失せてしまった。



はあ、と大きく溜息を一つ落とし、くる、と男に背を向けて





「アンタって変わってる。こんな唯の情報屋に貢ぐなんて」
「唯の? フフッ、良く言う…嬢チャンが唯の情報屋なら他の奴等は塵以下じゃねぇか。それに一つ、違うな」
「?」
「それは貢物じゃねぇ。愛する嬢チャンはオレのモノだって言う印だ」










(虫除け完了。フフっ、ついでに、猫耳や尻尾も用意してやろうか?)
(だったら、私は名前通りの鳥の特大着ぐるみを贈ってあげるわ)
(フッフフフ! それ着て求婚ダンスでも踊れってか?)
(豪快に丸焼きにしてやる)






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