例えば、海辺の小さなレストランなんてどうでしょう?。
建物はシンプルに─海の家を意識した、南国風の木造建築がいいですね。
内装は船大工さんに頼んでみたら、面白いかもしれません。
メニューはもちろん、海の幸をふんだんに使って組み立てます。
キャラメル海老のサラダ、酒貝のスープ、白サメのソテー、それに金色イクラのカナッペも!
フグ鯨…ですか?
いいですねぇ〜!
でも、あれは十年に一度しか捕れない食材ですから…メニューに載せるのは難しいかもしれません。
え?あなたが捕ってきてくれるんですか?
それならもちろん、ボクも一緒に行きますよ!
…そりゃあ、ボクはハントでは大した役には立てませんが、食材の声をきくこと、食材をあなた好みに調理すること、これにかけて右に出る者はいないって自負させてもらってますからね。
それから、お店の開店前と閉店後はボクとあなたの二人で、ささやかな食卓を囲みましょう。
…それはヒドいなぁ…そりゃあボクはよく、自分の食事もうっかり忘れて調理場につききりになるけど、あなたと二人でお店を開いたらそんなことはなくなりますよ。
どうしてって…だってあなたが諌めてくれるでしょう?
そうですよ、ボクはどっぷりあなたに甘える気満々なんです。
だからあなたも、ボクに目一杯甘えてほしいな…
ああ、甘えるってのが無理なら、寄りかかるって言うんでもいいんですよ。
だって肩肘張って一人で踏ん張り続けるのは、しんどいじゃないですか。
だからボクはあなたを支えて、あなたにもボクを支えてもらって、そうやって生きていきたいんです。
人という字は、人が人を支えあって……ってなんで笑うんですかーっ?
そんなおかしいこと言いましたか?ボク。
ちょ、ひどいです、ひどいですよ!
身長のことは言いっこなしです!
そりゃあボクはあなたより、その…チビかもしれませんが…それでもきっとあなたを支えきってみせますとも!
え?それはもちろん“死が二人を別つまで”ってやつです。
…そうですよ、ずっとずっと一緒です。嫌って言っても、離れませんから。
……………な、なんで泣くんですかーっ?
ん?
目にゴミが入った?
タイヘン!ちょっと見せて下さい、かがんでもらえますか?
…ん〜っと、あれ?ゴミなんか……
「チュッ!!」
〜っ!!……
コラ!
ぼ…ボクだってやり返しますからねーっ!
─例えばそれは、途切れることない波間で語り続けられる、とても幸せな。