しっとりと濡れたシーツは暑く乱れていたけど
それ以上に乱されてヘトヘトのボクにそれを交換するような体力が残っていようはずもなく。
ぐったりと横たわりながら、ボクやシーツをこんなにしてくれた犯人を横目に眺める。
それは普段の彼からしたら、信じられないほどあどけない寝顔。
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執着なぞ知らなかった。
富や名誉、権力なんか興味はないし
食に関しても美味いものが好きなだけで
“これじゃなきゃ駄目”
なんてなかった。
「トリコさん」
誰に呼ばれたって一緒のはずのたわいない呼び掛けも、今となってはなくてはならない必須成分。
要するに俺はこいつに
きっと依存してる。
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こんな時に、こんなことを思ってるボクは本当に馬鹿なんだろう。
彼は命をかけて戦っていて、ボクはその背に守られているばかりだというのに。
それなのに。
「離れるな、小松」
お前は俺が必ず守る。
それなのに、ああその言葉がこんなにも。
死にそうに幸せ。
トリコマへの3つの恋のお題:あどけない寝顔/きっと依存してる/死にそうに幸せ
あなたが引き出しにしまいこんだ言葉。
それは、ボクが何より欲したもの。
自惚れてもいいでしょうか?
その言葉はボクだけのもの。
どうか恐れないで、ボクにください。
ボクもあなたに贈りますから。
引き出しにしまいこんだ言葉を。
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急がなくていいよ。
そんなに焦らなくても、いいよ。
「だって、ココさん…」
君は泣きそうな顔をして、僕の為に頑張ってくれる。
それだけで僕にとっては充分な果報だ。
それに僕にはよく見えるから。
いずれ近いうちに、二人の望みが叶うって。だからそんなに急がなくていいんだよ。
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あの人の手は少し冷たい。
君の為だよ、なんて言いながら、ボクをさんざ苛む意地悪な指先は、粘着質な滴りで濡れていた。
「料理長」
部下から声をかけられて、ボクは現実に立ち返る。
差し出された半熟卵にぷつりと切れ目を入れたら、また思い出してしまった、あの。
濡れた指先を。
ココマへの3つの恋のお題:引き出しにしまいこんだ言葉/急がなくていいよ/濡れた指先
サニーはあまり、夢を見ない。
美容と健康の為に深く質の良い眠りは欠かせないから、夢を見るような寝入り方はしないよう心がけている。
しかし最近の彼はなんとかして夢を見れないものかと腐心している。
理由は、皆さんご存知の通り。
「夢でしかお前に会えない」
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決して口に出せない言葉がある。
または、決して口に出すものか、という。
何せサニーの美を追求する姿勢というのは生半可なものではない。
彼が思うにそんな言葉を口に出したが最後、守り通してきた自らの美が瓦解するのだ。
つまりはこれ
「俺ばかり好きでくやしい」
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某菓子メーカーから新発売したミントキャンディーは、近頃サニーの大のお気に入りだった。
味も容器も値段だって、大衆向けのおよそ彼の気に入るようなものではないのだが、ただ一点、特徴らしい特徴がひとつある。
「センチュリースープの小松印」
はっかの味を舌でころがして。
サニコマへの3つの恋のお題:夢でしかお前に会えない/俺ばかり好きでくやしい/はっかの味を舌でころがして
チョーシに乗るな。
いつもの決まり文句と共にその大きな手に鷲掴みにされたのは、彼に比べたらまるで子どものようなボクの手だ。
あまりにボクがあちこちフラフラするものだから、痺れを切らしたらしい。
…しかし…なんというか、落ち着かない。
だってねぇ、ゼブラさん…。
これって恋人繋ぎってやつ?
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はじめはなんて怖い人だろうとそればかりでした。
「ゼブラさん…どうして…」
相当な捕獲レベルの生物に苦戦して、傷だらけになったその人は
「無意味に生き物殺すなっつったのはテメーだろうが」
と呟きました。
それを聞いたボクは、場違いにもこう思ったんです。
今ここで抱きしめたい。
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遠く離れた地で、今も貴方はまだ誰も目にしたことのない、新しい美味を探して旅をしているのでしょうか?
コンビこそ組んでいない僕だけど、あなたの無事と成功を、毎夜祈ることくらいはさせて下さい…
それくらいしか、できないから。
眠りにつく前に。
ゼブコマへの3つの恋のお題:これって恋人繋ぎってやつ?/今ここで抱きしめたい/眠りにつく前に
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よりお借りしました。