困ったな。
僕が落とした苦笑いに、小さな彼はもっと小さくなってしまった。
俯いたうなじが真っ赤に染まって、細かく震えてる。
─可哀想に。
彼をそんな風にしてしまったのは、僕なのに他人事のようにそう思った。
可哀想な、小松くん。
「…ボクがただ一方的に想うのも、駄目ですか…?
貴方を困らせてしまいますか…?」
彼の顔は見えないけど、でも僕の目は必要以上に見えすぎるものだから、彼の気持ちは顔を見なくたってよくわかった。
それ以上に、その声音に秘められた形振り構わない必死な響きが彼の胸中を表していたんだけど。
「うん、駄目。困っちゃうな…ごめんね?」
曖昧にしちゃあいけない。
ズケズケともとれるくらい、ハッキリと告げてやると、一瞬息を飲んだ気配。
それから一拍おいて、鼻を啜る音、そして嗚咽。
…ひどく悲しい、哀しい物思いが、沸き立つ様に彼を包むのがよく見えた。
…なんでそんなに悲しむんだろう?
何しろ君は何か誤解をしてるに違いない。
君が好きだと、心から愛しているんだと言う僕の身体は、芯まで毒に侵されてるんだ。
いつ君に害をなすかわからない。
そんな僕に寄り添ってこれから先、一体どんな未来があると言うの?
それよりも君には相応しい相手が、すぐ身近にいるじゃない。
「君にはトリコがいるだろう?」
「トリコさんはっ…そんなんじゃないんです!!」
宥める言葉に直ぐさま反発してきた彼の顔がこちらをパッと振り仰ぐ。
涙に揺らめく大きな瞳は、強い光を放って焼けつくようだ。
それでも僕には視えるもの。
君たちの未来が。
幸せそうに寄り添って、互いを強く信頼しあい、いつまでもいつまでも、裏切りも別れも知らない、比翼の鳥のような─。
「貴方がすきです…」
信じない。
「僕は、ココさんがすきなんです」
そんなの、一時の気の迷いにすぎない。
「どうして、僕の気持ちを信じてくれないんですか…?」
どうしようもなくなって、君は泣き崩れるけど、だって僕は信じられない。
たった3%ぽっちの、ゆめみたいな未来なんて、そんなもの。
信じる宛てにできようもない。
あなたをすきだとなく鳥の名は