/天国で罪を犯す自由はない


現パロ会話文のみ





「オニーサン達暇ァ?」
「ウチ等買ってくんない?何でもサービスしちゃう」
「………」
「すまない、ワシら急いでるんでな」
「えーつまんなーい」


「聖ディフェールの制服じゃないか…あんなお嬢様達が援交とはな」
「どうでもいい。先に行くぞ」
「待てって三成」







「お前は勉強しなくても頭良いもんなぁ、羨ましいよ」
「確かにな」
「くっく、そう答えた方がお前らしいよ。儂はあっちの方で調べてるから、終わったら呼んでくれ」
「ああ」






「あ、申し訳ござらぬ」


「この本で間違いないか」
「はい。かたじけない」
(…こいつもディフェールの生徒か)



(……"照葉狂言")
「ご存知ですか」
(まずい。声に出ていたか)
「…ああ」
「この方の書いた小説が好きなんです。人に寄りにけりですが、某は引き込まれる。」
「……」
「良かったら席、ご一緒しませぬか?実は某、ここに来るのは初めてで…」




「三成、あの子知り合いか?」
「否。さっき知り合った」
「女嫌いで有名なお前が…まさか女をナンパする日が来るなんて……」
「たまたま趣向が合っただけだ」





/夢十夜
後半現パロ


「呆けるな」
幸村は呼び起こされたように体をびくつかせると、目の前にいる男の顔を見た。
青紫の羽織をまとった袴姿の麗人が、無感情な顔を僅かに歪めている。幸村はやや視線を彷徨わせた後「申し訳ござらぬ」と頭を下げた。


「調子が悪いのか」
「いえ…そうでは。昨晩、その」
「何だ」
「奇妙な夢を見ましたから」

三成は幸村の手を引くと、人目につかない部屋へと移った。その意図が読めず幸村は不思議そうに見つめる。

「…夢見が悪い程度で調子を崩されても敵わん。話位は聞いてやる」
「で、では。ありがたく」



幸村の言う奇妙な夢とは、こういう内容だった。

夢の中で自分は戦装束を纏っており、戦場にいるのかと思いきや、全く別の見た事も無い場所に立っていた。その場所とは、墓石のように冷たい白い壁で覆われているものだった。よく見れば、二三歩先に深い溝が作られている。それを隔てた向こうの岸に、妙ちくりんな服装をしている一人の男がいた。しかしその男は確かに、幸村の見覚えのある人間だった。


「確かに、向こう岸で貴殿が立っておられました」
「私が?」
「何度呼びかけても、遠いせいか…此方に気付かぬのです」
「それからどうした」
「すぐに見えなくなり申した。黒い何かが右から飛んできて、視界を塞いで」
三成と容姿は瓜二つだが、何かが違う。あの男はこの世界の住人ではない。幸村は薄々感じていた。



三成は思案した後、確かに奇妙だと口にした。
しかし、当然ながら誰も知らなかった。まさか彼もまた同じ夢を見ることになろうとは。





+++




「へんな夢をみました」


「……何だ突然」
「聞いて下さいませぬか」
三成は了承の意で、読みかけていた小説を開いたまま机に伏せる。幸村は何とも言えない表情でクッションを抱き締めた。



「夢の中で地下鉄のホームに立っていたのですが、自分以外に誰もいなかったのでござる。
よく見たら向かいの方で、三成殿が立ってて……」
「それの何が変なんだ」
「普通の服装じゃあなくって…。戦国時代?のお殿様が着るような、陣羽織とか鎧を纏ってて」
「陣羽織…?」


「最初は変だなって思ったけど、あんまり違和感無かったというか。何だかとても怖いお顔をしていました。みつなりどの、って呼んでも反応無かったし」
「……」
「それからすぐに電車が来て、見えなくなってしまいましたが」


三成は一拍置いた後、やや呆れたような顔を幸村に向けた。
「妙な夢だ……大方夜更かしのし過ぎだろう」
「あっ今馬鹿にしましたな」
「さっさと寝るぞじゃじゃ馬」
「まだ早すぎまする!」



/Hallo,again
一回はやってみなくちゃ気が済まない遊廓ネタ


「こんな処まで連れて、どうするつもりだ家康」
「三成、お前はどうも生真面目過ぎる。たまには、女を買って憂さ晴らしも良いものだぞ」
家康が三成を腕を引いて辿り着いたのは、赤い灯りが点る遊廓。柵という名の檻で囲まれている中に、髪を結い煌びやかな着物を纏った女たちが優雅に座している。色に疎い三成にとっては、女が一箇所に集いひしめいているようにしか見えなかった。


「あんさんいい男ね、あたし初音っていうの。一晩どお?沢山奉仕したげる」
その集団の中にいた一際上玉な女が、三成の端麗な姿を目に留め、声をかける。

「…遠慮しておく」
「あらもしかして初めて?なら尚更経験積んどかなくちゃ、ねえ?」
女が後ろにいる娼婦仲間に同意を求め、娼婦達は一斉に笑っている。それが馬鹿馬鹿しく思えたか、三成は背を向け歩き出した。

「もったいないなぁ。あれは郭の中でもかなりの…」
「貴様の心遣いを無碍にするつもりではない。が、如何せん興味が薄い」
三成は友人の咎めにも耳を貸さず、すっぱりと切り捨てるように言い放った。


「私はいい。あとは貴様の好きにしろ」
「おい、何処へ行くんだ?みつな…」
家康はやや言い淀んで、三成の背中を見送った。





(…あのお節介が。こんなものに時間を割く暇があるか)
先程の遊廓から少し外れた場所で、三成は眉根を寄せていた。
何とはなしに歩いていると、狭い道が目につき足を止める。見た感じ路地裏のようだが、客を呼び寄せる為の提灯がぶら下がっている。気紛れが働いて、三成の足は自然にそちらへと向いていた。



ただただ大きい廓とは違い、そこは貧相な雰囲気が漂っている。ここが下級娼婦が身を売る宿だと、三成はすぐに察した。しかし女達の身体は痩せこけ、三成の存在に気付き目配せはするものの、声をかける気力すら残っていなかった。感染病にかかり、青白い顔で横になっている者。随分前に息を引き取り、死体の処理もされず白骨化している者。あまりにも凄惨な光景に三成は息を呑む。

一番奥の突き当たりまで進むと、衣擦れの音が耳に入ってくる。柵の前まで歩みを進めると、奥にいた女が体を引き摺るように前へ出て来た。よく見ればまだ少女と言って良い程に幼い顔つきをしていて、三成は内心驚いた。赤茶色の毛を手櫛で整えて、宿主に教え込まれたのだろう、どこか甘えたような笑顔を少女は浮かべた。


「此処の主はどうした。お前たちを雇っているのだろう?」
「主人は多忙で、今は……。お客様、買って下さるのですか?」

少女の嬉しそうな様を見て、三成は何処か複雑な面持ちで見つめた後、「いくらだ」と答える。少女は指を3本立てて、小さく呟いた。向こうの廓の女に比べ、まるで天と地の差かと思える程の値だった。少女の話によると、一晩買う金があれば外にまで連れ出す事が出来るとのことだった。三成は少女に手を出させると、懐から出した代金を握らせた。



少女は幸と名乗り、5年前にこの地に売られたのだと言った。元々は武家の出であり、御家が破綻して一家共々路頭に迷った後男は農民に身を窶し、女は皆体を売って生活するしか道は残されていなかった。少女は己の売り方が分からず廓や宿を転々とし、最終的にここへ辿り着き、ひっそりと客を待つ日々を送っていた。年は数えで十七、もし御家が破綻していなかったら、今頃他家に嫁ぎ幸せな日々を送っていたかも知れない。三成も幼い頃は地侍の息子ながら裕福な生活はできなかったが、少女程の過酷な経験はしていない。故に耳にすればするほど残酷な話だと、そう感じた。

三成は近くにある適当な宿屋を見つけ、幸を連れて入った。彼女の身なりを見て誰もが下級娼婦だと気付いたが、三成は気にする様子もなく奥へと進む。一方、幸はもの珍しげに宿屋の周辺を見渡していた。


「お侍様のお名前を教えて頂けませぬか」
「…三成だ」

「では三成殿。それにしても…こんな良いお宿で過ごさせて貰うなど、何だか申し訳なく思えまする」
「気にするな。私の気紛れにお前が付き合う、それだけの事だろう」
わざわざ高い金を出して宿をとったのは、長い間座っていたせいで巧く歩けない彼女を気遣っての事だった。幸は三成のその隠れた気遣いに、内心微笑んでいた。

その後幸は久しぶりに湯へと入った。最後に入ったのは売られる前で、以降は冷たい水を浴びて生活していた。彼女はこれは夢なのだろうか、といった気持ちで自分を買ってくれた三成に至極感謝した。






「三成殿、わたしは幸せ者です…。こうして湯に入って、美味しいものを食べて…」
「気負いしているのか」
「いいえ、そのような事は。ただ、昔のあの頃を思い出して……」
彼女の目には涙が浮かんでいた。

「…三成殿は」
「?」
「三成殿を見ると、父を思い出しまする。病で早世しましたが……とても良い人でした」
三成は黙って幸の傍に寄ると、その細い体を抱きしめる。幸は驚いたような声を上げるが、次第に彼の背に腕を回していく。しばらくして、三成の耳に嗚咽の声が入ってきた。






夜も更けた頃。三成は布団の上で横になっていると、がさりと音がし目を覚ました。それは重く圧し掛かかって来て、それが何であるか気付くのに時間はかからなかった。

「幸……?何をして、」
行灯の光はないが、月明かりで何とか視認できる。幸が全裸である事に気付いた三成は、体を捩らせ動揺した。

「三成殿、」
「何をしている、早く服を」
「何ゆえわたしに手を出して下さらないのですか」
彼女に問われ、三成は答えに詰まった。


「こんな汚らしい女を買ってくれて……二度といけないような、こんな場所にまで連れて頂いて……わたしにもお返しさせて欲しいのです」
幸の声は震えており、ぎゅっと手が敷布を強く掴む。
「……悪かった、」
三成は呟くように言うと、幸の頭を優しく撫でた。


「この御恩は一生忘れませぬ。…みつなりどの…」












「三成!」
夜明け方に宿を出ると、家康が向こう側で手を振っているのを三成は見た。

「早く城に戻らんと煩いからなぁ」
「分かっている」
「儂はてっきり帰ったと思ってたんだが。もしかして、良い女見つかったのか?」



「その話をしようと思っていた所だ」
三成は、僅かに微笑みながら答えた。



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