/コイスルオトメ 三♀幸+慶 「やぁ幸ちゃん、久し振り!元気してたかい」 「前田殿…!?こちらへ何用か」 突然の風来坊の到来に幸村は驚きの表情を浮かべる。と同時に敵襲ではないのかとやや安堵していた。 「いやさ、ちょいと用事頼まれて。丁度此処を通りかかったから様子見に来たんだ」 「そ、そうでござるか」 幸村は慶次の明朗な性格は嫌いでは無かったが、恋に疎い彼女は慶次の恋愛推奨論には些か耳を塞ぎたくなる気持ちでいた。 やはり今回も同様で、次の言葉に体がかちばった。 「幸ちゃんは良い人見つかったかい?」 「よ、よいひと?」 「相変わらず初だなぁ、幸ちゃんも良い旦那さんを早く見つけなよ」 「と、殿方……某は武芸の達者な殿方が、っていやいや」 聞き漏らさなかった慶次は、追い討ちをかけるかの様に質問する。 「えっ、誰々?誰だって」 「な何でもありませぬっ」 「それって奥州の独眼竜?」 「滅相な!伊達殿は好敵手であって、あくまで刃を交える関係にござらあ!」 「んーじゃあ家康?」 「徳川殿はわれらの敵にございますぞ!」 「じゃー誰なんだろうなぁ…………まさかまさかの凶王さんとか?」 「…マジ?」 幸村は堪えきれず顔を両手で覆った。そうですと答えるようなものだったが。 /洒落 現パロ R15くらい 政宗と三成と 社会から追放、或いは見捨てられた若者達が住む地下アパートがある。有り体に言うと、あぶれた人間の収容所。 優秀な兄と比べられ、いつも虚しい日々を送っていた。虚しくて、ちょっとだけ薬に走ったら離縁状を叩きつけられた。親にとって見れば、自分なんて大した存在でもなかったらしい。 ルームシェアで、中には三つの部屋に分かれ、台所や風呂は共用だ。ルームメイトの政宗殿と知り合い、よく話すようになった。気さくで英語訛り、何と帰国子女だとか。 年上の彼女に薦められた薬に溺れて一度捕まり、釈放後は独りでここに住むようになったそうだ。度合いは異なれど、某と境遇が似ていたから、ここまで仲良くなれたのかも知れない。 「こっちの部屋は?」 「勝手に入っても怒らねーけど、後悔すると思うぜ」 「誰かいるのですか」 「石田の部屋。あいつとはあんま関わらねー方がいい」 そうこうしてる内に勝手にドアが開いた。 ドアから出て来たのは若い女だった。もしや石田というのはこの女性の事だろうかと思ったが、どうも違うらしい。 次から次へと女が出て来たからだ。意味が分からずきょとんとしてると、女の肩がぶつかる。ついでに鼻で笑われ、若干むかついた。香水臭い。 ゆっくりドアに近付いてみると、煙草臭い、真っ暗闇の部屋が見えた。その瞬間、中からにゅっと手が出て来て、某の腕を捕らえ引き寄せられる。寸前で政宗殿に首根っこを掴まれ事なきを得た。 「石田、こいつは新しいルームメイトだ。間違えんな」 「……」 石田という男は某の腕を乱暴に放すと、部屋から出て来た。背は高くモデルのようで、どこかきつい印象が強い。 「程々にしねーと病気貰うぞ」 「…関係ない」 「どこ行くんだよ」 「……シャワー借りる…」 某の存在も顧みず、黙々とズボンを脱ぎ捨て全裸になる男。切れ長の目で某を一瞥した後、そっけない様子でシャワー室に入っていった。 「………一体何なのだ」 「単純にセックス依存。毎日色んな女連れ込んでる気違い」 関わっても何のメリットも無いからやめとけ、そう政宗殿は言う。 「あいつ童顔で巨乳の女が好きだから、気をつけろ」 部屋に連れ込まれるぞ。 政宗殿がぽんと某の肩を叩くと、自分の部屋へ戻っていく。数秒して体がぞわりと震えた。 /今は言えない 家♀幸 「徳川殿」 「真田か?久方ぶりだな」 徳川と武田がまだ同盟関係にあり、家康が甲斐の屋敷に呼ばれたその晩。晩酌を頼まれた幸村が部屋に訪れ家康は驚いたが、やがて綻ぶように微笑んだ。 白い単衣に赤い袴姿は明らかに男子の衣装だが、白い肌と細い首が正真正銘の女性だという事が伺える。 「生憎この屋敷には酌女はおりませなんだ、某でよければお許し下され」 「とんでもない、」 むしろお前で嬉しい。立場の関係上ぐっと言葉を飲み込む。 「むしろお前と共にできて良かった。ゆっくり話も出来るからな」 「それは光栄ですな。某も貴殿と一度話を交えてみとうございました」 にこにこと笑う彼女に胸が脈打ちながらも、後ろ頭をかきながらやり過ごす。 それから戦の兵法から故郷の話、取り留めのない話でさえも幸村は興味津々に頷いて耳を傾けていた。家康はその好奇心の深さと細やかな心遣いが気に入っていた。酌には慣れていない訳ではない。頃合いを見計らって杯に徳利を傾ける様は、まるで身の世話をしてくれる女房のようだった。 「真田は飲まないのか?」 「某は酒はあまり」 「無礼講だと思って、それではだめか?」 「……では、頂きます」 徳利を注いでやると、彼女は杯をゆっくりと煽る。ふ、と息をついて頬を淡く染める。 「久しぶりに飲みましたが、おいしゅうございまするな」 「そうか、良かった」 ほんの少し瞳が潤んでいるように見えて、まるで誘っているかのようだ。家康は唾を飲み込む。ここが甲斐の屋敷でなければ、押し倒していたかも分からない。 「徳川殿、お聞きしてもよろしいですか」 「ああ。なん、だ?」 「貴殿が目指すものとは、一体何なのでしょう」 言えるはずがない いつか信玄公を超え、お前が認める程の立派な男になりたいなどと。お前を妻として迎え入れたいなどと 「まだ、だ」 「?」 「まだ、それは言えぬ。言える時が来たら教えるよ」 「…分かり申した。その時には教えて下され」 (その時には、お前はどんな顔をして聞くのだろう) 杯の中の酒が、ゆらゆらと波打つように揺れていた。 /熊害事件簿 官♀幸 ったく、こんな穴蔵に何の用かと思ったら凶王の軍勢かよ。大将が従属しろだの何だの喚いているが、これだけは言いたい。 凶王に関わるのは真っ平御免だってな。穴蔵に叩き落としておいて小生を今更こき使おうって寸法が気に入らねえんだよ。大体小生よりも一回りも二回りも若造なあいつが、何偉そうにふんぞり返ってんだ畜生。小姓上がりのもやしっ子が、あの細い体でどうやったらあんな怪力になれるんだ。色々おかしいだろ。ちなみにこれは小生の心の声だ。誤って口にでもすりゃあ間違いなく刺身のブロックにされるからな。 「貴殿が黒田官兵衛殿か」 「えっ!?何時の間に角土竜が?何故じゃああああああ」 いくら何でも早いんだよ!!何で小生の周りはいつもこうなんだああああ!! 「?あの奇妙なからくりでござるか」 ……… おお、これは… なかなかいい女だ。 野郎だらけの穴蔵に住んでるせいで、まともに相手にしてない気がする。とゆうか、こんな年若い娘があの才槌にこき使われてんのか、可哀相に。 「お初にお目にかかる、某は真田源次郎幸村。訳あって西軍に下り申した。三成殿の命により、貴殿を連れに参った」 「お前さん、甲斐の若虎か。………お前さん顔色が優れないが、大丈夫か?」 「えっ?左様な事は…」 気のせいじゃねえだろ。息も荒いし。案の定若虎は体が揺らいで、そのまま倒れてしまった。 「あっ、」 寸前で抱き留め、小さな体がすっぽり収まる。どうやら熱があるようだった。 ああくそ、何なんだよ。 さっきから、 さっきから…… 胸が当たってやべえ……… 最近の娘御はこんなに育つもんなのか?誰も見てないし、ちょっと位触っても減らないよな? 「真田っ!!」 手を伸ばした瞬間、小生の体は鉄球ごと宙に舞った。突如現れた凶王三成は若虎を抱き寄せ、人が変わったみてえに心配している。 「済まない、貴様に無理をさせるとは……」 「穴熊よ、三成の大切な部下に傷をつけるとは」 「ちっ違っ、小生はむしろ助け――」 「きついお灸を据えてやれ、三成」 「覚悟しろ、官兵衛ぇぇッ」 「何故じゃ、何故こうなるんだああああああぁ」 もどる/とっぷ |