/幸福論 家幸♀R18 「真田、疲れたろう?ここらで腰を下ろさんか」 「綺麗でございますな…」 真田が驚く先は、広大な森の中にある美しい滝だった。ざばざば、と湧き出でるそれは川の流れを作り、岩を濡らした。 「だろう?太古に土地の枯渇を救うため名のある僧正が法力を使い湧かせたとの伝承がある」 「澄んでおりまするな」 「飲んでみろ」 「誠にござるか」 幸村は水辺に近づき、湧き出た水をすくい上げると、そっと煽る。 「うまいだろ」 「………はい」 幸村は具足を脱ぎ捨て袴を膝まで捲り、足を浸す。滝水が落ちて来るものの、川の流れは強くないため特に家康が咎める様子はなかった。 「真田?何処へ行く」 「たまには物見遊山でもと」 何を思い立ったか、彼女は軽装のまま滝の近くまで歩み始める。 形状上流されることは無いが、これ以上進めば濡れ鼠になることは確実だろう。 「水浴みか?」 家康も慌てて後を追った。 「これは……御仏を表しているのだろうか」 滝をくぐった先に見たもの。 少なくとも幸村には初めて目にするものだった。 「歓喜仏だな」 「家康殿、」 「あまり遠くへは行くなと前にも言ったろう」 こんなに濡れて、と幸村の湿った髪をくしゃりと撫でる家康もまた同様だった。普段後ろに撫でつけている前髪は今ばかりは乱れていて、幸村の頬がほんのりと朱色に染まる。 「聞いたことは無いか」 幸村は首を振った。 「日の本から遥か南では、この様な形の仏が沢山いるらしい。」 「御仏が女子と抱き合っておりまするが…」 「恐らく、性交を意味している」 「は破廉恥なっ」 家康は幸村の腰に腕を回す。 「破廉恥じゃないさ。こうして体を交えることそのものが、人の業の中に組み込まれている。ただそれだけだ」 「やめてっ、家康殿、こんな所でっ」 「悪いな真田…今のお前を見てると、どうもムラムラして」 幸村の上着を剥ぎ取り、岩場に押し倒す。 「んッ…」 突然の口吸いに幸村は体を強ばらすが、次第にほだされ彼の背中に手を回した。 「あッ」 胸当てを捲られ、桃色の頂を強く吸われる。吸い上げる度に跳ねる乳房に愛着が湧いたか、家康は片手でもう一方の乳房をこねくり回す。 「やぁん!いぁっ、痛うござるぅ」涙目で訴えようとも、家康は夢中でそんな事お構いなしといった様子だった。 慣れた手つきで幸村の袴を脱がすと、下着のない状態で姿を表した秘部に指を這わす。 「えらく濡れてるが…水の所為なのか?」 「もう!は、早く、入れ…」 家康は上機嫌に笑み、幸村を向き合う形で抱え上げる。今の二人はさながら歓喜仏のようだった。 「入ってるの、解るか?幸村」 「う、ぅんッ」 律動を加えながら家康は幸村を支える。幸村の中は収縮し、彼のものを締め付ける。 「欲に溺れるのは悪い事じゃない、だから安心してイけ。幸村」 「〜〜〜〜ッ」 幸村は髪を振り乱しながら、家康の逞しい体にしがみついた。 「非道ございます」 「悪かったって。そう怒るなよ」 幸村は衣服を整えながら、家康をキッと睨んだ。当の家康は謝っている割に清々しい表情をしている。 「どうも気が抑えられんくてなぁ」 「一度だけでなく二度もやってくれるとは思いませなんだ」 「水辺にいるお前があんまり艶っぽいから、つい」 「なっ……やはり、破廉恥でござる!」 顔を両手で覆い恥ずかしさを訴える想い人に、家康は「今更だろ」とその頭をくしゃりと撫でた。 /怖れている事は何ですか 家幸 庶民ちっくな設定 あの子が好きだった 好きだったから、何も思っていない振りをした いつまでも笑顔でいてくれるならそれで良かった 平常を装って、今日も会いに行く 幼馴染の客人を招き入れた幸村は、すぐに茶と菓子を用意した。夫の仕事仲間でもあるその男は、幼い頃から知る幸村がすっかり出来る女房となっているのを認め顔を綻ばせる。 夫は今はいないらしく、その間は毎日掃除や洗濯をしているそうだ。箱入りで何も出来なかった幸村は、手助けも借りながら何とか習得していき、今は全部こなせるようになっているらしい。 それと同時に、彼と幸村はとうとう夫婦の仲になったのだなと家康は実感した。 「信州に?」 「ああ。仕事で暫くは此処を離れる」 「まあ…大変でいらっしゃいますな。しかし信州は某の故郷に近うございます」 「そうだな。お前の親父さんの家に寄って行くとするか」 「お館様もお喜びになります」 幸村は笑顔で答える。 「祝言の時、お前の晴れ姿を見て大泣きしていたのを思い出すよ」 「それから宴で飲み過ぎて倒れられたあの方を、貴殿が介抱してくれたのでしたな」 思い出しているのか、笑いを耐えて口元を隠す。袖口から覗いた手首に一瞬、赤いようなものが見えた気がした。 「なぁ…真田」 「はい」 「お前は、幸せだよな?」 なんて無意味な質問だろう、と内心我に返る。そんな事一目瞭然なのに。 「はい。勿論です」 幸村は家康と目を合わせ、きっぱりとそう告げた。それが真実であると示すかのように。 「そうか、ならそれでいい。」 家康は微笑み、幸村の差し出した茶を飲み干すと、話もそこそこに暇をする事にした。 結局今日も言えず終いだと、幸村は家康の去った跡を悲しく見つめた。 彼女の躯には今、無数の痣があった。気付かれないで良かったと一息つく。 夫が最近おかしいと思うようになったのは随分と最近だった。情事の際夫が狂った様に腰を穿ち、幸村の細い首を締め上げるのだ。乱暴に手足を掴まれるので、痣が何ヶ所も残る。まるで悦に浸るような表情で、呼吸が出来ず苦しむ彼女に笑いかけるのだ。 信州へと行ってしまう家康を思いながら、幸村は虚空を見つめている。 /繋げない手 三幸♀←家 幸村出て来ない 黒権現注意R18グロ 東軍が勝利を治めた関ヶ原の後始末は呆気なく片が付いた。彼方此方に散った残党を始末し、敗北した西軍の総大将石田三成は牢獄に幽閉された。西軍の中でも特に脅威であった武将、真田幸村は依然として行方が知れず、捜索の隊を寄越しても見付ける事は叶わなかった。 家康は顔には出さないが張り付いた笑顔の下には激しい苛立ちが隠れていて、それを察した家臣達は下手に口を開こうとはしなかった。 彼は喉から手が出るほどに欲していた紅蓮の鬼を、ようやくこの手に出来ると思っていた。その一方で、一切此方に靡く事はなかった幸村を容易く手中に治めてみせた三成が憎かった。 彼の眼は三成の更に先にある天下を見据えていた。最初から三成の姿など眼中になかった。だが天下と同じく、幸村を心から欲していたのは真実だった。 「いい加減吐くつもりは無いのか」 地下牢の中で、家康は穏やかな口調で問う。 鎖に繋げられた手足は青白く、爛れた傷や切り傷が酷く痛々しい。乱れた前髪が目に隠れているものの、家康を睨みつけている事は確かだった。 「知らん、と言っている……その耳は、飾りか」 「悪いがその言葉は聞き飽いたんだ」 家康は持っていた鉄棒の先を三成の胸板に押し付ける。途端、皮膚を焦がす音が耳に入る。 「…ッ、ぐぅ!!」 「お前が素直に口を割れば、すぐに楽にしてやるのにな。儂といえ、お前に構う時間すら惜しい」 三成は"殺してやる"と声にならない声で呟く。家康はその様を見て嘲笑った。 「なぁ三成。幸村とはもう褥を共にしたのだろう」 三成は何も答えないが、構わず家康は続ける。 「幸村は初だが器量は良い、さぞ調子も良かったろう。お前の得物で貫かれて、気持ち良さそうに鳴くあいつを考えるだけで気が狂いそうだ」 「憎い、憎いよお前が。幸村を誑かしたその得物をいっそ…切り落としてやりたい位にな」 (この男は、狂っている) (逃げろ幸村。なるだけ、遠い、遠い所へ…) 言動の恐ろしさとは裏腹に、家康の瞳には光が宿っている。 どの道死しか残されていないのならば、一思いに殺してくれれば良いと三成は思った。 だからといって、幸村の居所を吐くつもりも毛頭無かった。この男に捕まれば、今の自分よりも、死ぬよりも酷い目に合わされるだろうと直感していた。 「良い事を考えたんだ、三成」 極めて明るい声色で家康は言った。 「本当の事を言わなかったら、一つ一つお前の大事な部分を切り落としていくんだ。最初は耳からが良いか?心配はしなくても良いぞ、死なない程度には抑えておくからな」 (…逃げろ、幸村……) /終わる術無きか 幸村が大阪の役で死んだ後の話 家康の側室出てきます 家→幸♀っぽい 「竹千代様ったら、まるで童の様ですね」 まだ幼い容が、口元を小さく綻ばせて笑う。 名は昌子という。西郷という村で彼女の姿を目にとめた家康は、迷わず側室として迎えた。理由としては奇妙な事に、大阪の陣で討死した筈の幸村と容貌がそっくりだったからだ。その上年も同じと来たものだ。家康は他の側室は愚か、正室すらも放って殆ど彼女に夢中になっていた。 「うん?儂だって、甘えたい時はあるさ」 「ですがあまり私に構ってばかりだと、瀬名様が拗ねてしまいますよ」 「瀬名か、あいつは何かと煩くて敵わんなあ…」 家康は詰らない様子で顔を背けると、彼女の腰に回した腕をぎゅっと強める。 昌子は生まれつき盲目でか弱い女性だが、誰よりも優しく慈悲深い女でもあった。それが哀しい程に、似ていた。振り払おうとしても、過去の残影が彼女と重なってしまう。人目みた時から、彼女が幸村であって欲しいと願っていた。そんな事が有得る筈も無く、これ程までに彼女を追い求めて居たのだとつくづく思った。 "自分で壊しておきながら、今も尚。別の人間を立ててこの空虚を満たそうとしている。なんて浅ましいのだろう。笑ってくれるか、幸村。" 「こうして貴方と共に過ごせる事は嬉しい。けれど、時折寂しそうなお顔をなさるのは何故でしょうか」 前にもう問うた事だが、彼女は再度口に乗せてみる。それでも家康は何処か困った様な顔をするだけで、何も答えてはくれない。 「なぁ、」 「はい?」 「今一度、笑ってくれないか」 昌子はどうしたのだろうと、首を傾げる。 「儂はお前の笑った顔が好きだ」 「竹千代様が望むならば、何度でも笑って差し上げますよ」 細く白い手が彼の頬を包み込んだ。 ―――"ああ、幸村" 家康の目尻から涙がひとつ、零れ落ちた。 もどる/とっぷ |