/"家康という男" 会話文 家幸♀ 「真田、何故だ?お前が西軍に付くなんて……。お前と儂、同じ志を持った仲間では無かったのか?」 「家康殿、西軍の門を下ったのも全て某の意思にござる。同じ師を持った仲であろうと、某のこの思いだけは揺るぎませぬ!」 「真田…!」 「というのは建前で」 「へ?」 「1、2ではあんなに童のようにコロッとしてたのに、たったの1年でこの成長は一体何なんでござる!? 某の愛らしい玩具であった家康殿がァァァ!!詐欺でござる、ぜってありえねーでござる!!」 「(詐欺て…!)いや儂も丁度成長期だったし…そんなに変わったのか儂って?」 「こんなの家康殿じゃない」 「存在否定…!?今までどういう目で儂を見てたんだ」 「こんなに大きくなられては、愛でようがないではないか…!抱っこもできぬ!!」 「ああ、そんな事もあったな…。だが真田、儂もいつまでも子供ではおれんのだ」 「うっ…」 「機は熟した、今が動かねばならぬ時だ。儂が槍を手放したのも覚悟を決めたからだ」 「家康殿……」 「昔(嫌々ながら)してもらったおんぶや抱っこはもう今は出来んが、お前と共に平和な世の下で、ゆっくりと話がしたいと思うている!」 「わわっ!」 「ははは、真田は軽いな!」 「……家康殿なんか、嫌いにござるっ」 「そうか。儂は好きだけどな」 「!!」 /Japanese peony ダテサナ要素有 「兵五郎様ッ、なりませぬ!」 「おやめくださいませ!」 穏やかではないな、と廊下を通りかかった政宗は思った。 侍女達が悲痛な声を向けている先には、まだ年端もいかぬ子供が大太刀を手にして庭の真ん中に佇んでいる。 足元には無惨にも切り落とされた大輪の花が散らばっていた。 「おい、何してんだ」 「……父上」 ややこちらを見る少年の瞳は冷たい。 兵五郎は父親である政宗とは似ても似つかぬ風貌をしており、琥珀色の目や色が抜け落ちたように白い銀髪がそれを明らかにしていた。 「花が、嫌いなもので」 足元に転がる花弁を踏み付けながら、侍女達のいる狭間を横切っていく。 「牡丹がか?」 「………」 その時だけ兵五郎は答えなかった。 「お前の母親が好んでいた花だ」 「ならば、尚更好きにはなれませぬ」 「俺がアイツにあげたんだよ。職人に頼んで、裾に牡丹をあしらった赤い打掛だ。 まだお前が生まれて無かった頃にな。…そんなに、嫌いか」 それを聞いた兵五郎は、ますます眉根を吊り上げた。 「俺は母を、否、あの女を信じられない。 父上は俺を息子だと仰るが、ならば何故俺の髪は同じ黒髪ではないのですか。 俺は知っている、父上が時折何処か寂しい目で俺を見ていることも…!」 「兵五郎」 「っ、」 諭すように名を呼ばれ、兵五郎は我に返った。 「お前の母上は、それは良い女だった。素直な方では無かったけどな。 だが俺達は敵同士で、一生結ばれることのない仲だった。幸村は御家を守る方をとり、結果武将として散った。 幸村が死んでから、お前を部下の忍から預かったんだ」 「………」 「誰の子であろうと、関係ねえよ。幸村の意思で俺に託したんだから」 「お前に仙台を担がせる事はしてやれねえが、別家を立ててやる。お前は、お前の道を進めばいい」 「……ちちうえ、」 「その代わり、伊達の名に恥じない人間になって貰わないとな。 兵五郎……いいや、秀宗。」 /残したかったもの ダテサナ♀R18 「あ、ぐ…はな、し」 「敗将が口答えする権限はねえ……あんたには役目がある」 伊達の後継を産む役目がな。 政宗は冷たく言い放ち、幸村の体を乱暴に揺らす。結合部分からは白濁に混じった血が流れ出ていた。 「あんたが西軍につかなければ……あんな野郎の下につかなければ」 「ひぎっ、」 「foolish……あんたは人が良すぎるんだよ。同盟を結んだだけの男をわざわざ気にかけて、契りまで結びやがって」 「あ、あがっ!?ああァーッ」 赤黒く染まった摩羅が幸村の子宮口にぶつかる。 「なァ……そんなに良かったのか?石田の摩羅は」 「ひぃ、ひ……ハァ、ハァ」 「あんたの腹の中……あいつの子種で一杯なんだろうな。綺麗にしてやるよ」 「どうせ、あんたが産んだ子供は誰との子かすぐに分かる。もしあの忌々しい銀髪だったら、躊躇せず殺してやる」 「………!!!」 幸村の顔色が真青に染まる。 「殺さないで!殺さないで下されぇっ!何でもするから、どうか、どうか」 あのお方の唯一の形見です。 どうか殺さないで。 哀願し縋ってくる幸村の頬を彼の手が張ったのはその直後だった。 「竜の跡を継ぐのは竜の子だ。それ以外は生かす理由もねえ」 /亡き君 家幸♀死ネタ 手も触れで惜しむかひなく藤の花 底にうつれば浪ぞ折りける 泣き濡れた眼から、雨に混じった涙が白い頬に落つ。 遠い向こうで、大阪城が在処を示すように炎をあげている。 拾丸様と淀殿はご無事だろうか。 そうであれば今頃、某が敷いた経路を通って脱出を試みている筈。天下人なれど体はあまり丈夫では無いお方である故、とても心配でございます。 「真田……」 「完敗にござる。まさか、貴殿に首を預けることになろうとは」 家康はその手が血に汚れることを気にせず、幸村の身体を支えていた。 「さ、なだ…わしは」 お前を救いたかった。 お前を心から笑わせたかった。 お前とよすがを結び、太平の世のもとで、 「某は、三成殿の意志を継ぐ者にあれば」 かつての関ヶ原の地にて、三成殿と約束を交わしたのだと幸村は言う。 「この意志を継いだからには…、貴殿を止める以外に無いのだと」 「言うな……もう喋らないでくれ!」 家康は幸村を抱き締めた。冷え切った体に熱を与えるように。 しかし時既に遅く、幸村のその目には暗転した世界しか映らない。 「しろい、はなはた…そこに、おられるのですか?」 名前を紡ごうとした口が静かに閉じられる。 雨はまだ、止まない。 もどる/とっぷ |