関サンド 死ネタ注意 関ヶ原しかいません 自分が蹴りを受けたと分かった時には、既に体が地面に叩きつけられていた。家康はすぐ立ち上がろうと上半身を上げた瞬間、丁度目の前に敵が迫っていた。今、天下統一の障害となっている無二の親友が、絶望の眼差しでこちらを見下ろしている。 胸倉を掴まれ、頭蓋が冷たい地面にぶつかる。くらりとしながらも、家康は三成の異変に早く気付いた。その刀の切っ先で喉元を抉り取るなどいつでも可能だというのに、彼は一向に刃を向ける素振りを見せない。 「か…、ものか…」 三成は掠れた声で何かを繰り返し呟いている。目の焦点は合わず、自分ではなく別の何かに語りかけるように。それがまるで白痴のように映って、家康はただ見ていることしかできない。 「逝かせるものか、逝かせるものか、逝かせるものか、逝かせるものか、けして、けして」 (真田) 彼を再度狂わせた原因は、己だ。幸村は三成にとって、最後の頼みの綱だった。家康は最後に見た幸村の姿を思い出した。核心を突かれた時の彼女の表情が、頭から離れない。 幸村も同様に、三成の存在は己の弱点に等しかった。目の前で生娘のような恥じらいを見せた時、家康は嫉妬の念に苛まれた。 (儂は、三成が妬ましかった) 東の太陽が唯一欲しがったもの。遠く離れた影の象徴でありながら、彼がそれを容易く手に入れたことが酷く悲しかった。心苦しかった。 (もう二度と自分の手に渡らないのならば……もう、いっそ) 顔面に強い拳を受け、咥内に血の味が広がる。一度ならず二度、三度と殴られ赤い飛沫が地面に飛び散った。家康は三成の拳を何度も受け続けた。 「逝かせるものか」 三成は乱れた前髪の隙間から家康を睨む。 「あいつが渡った先に、貴様を逝かせなどしない」 もどる/とっぷ |