ウィルバーは全く寝付けず、ベッドの中で無意味に寝返りをうっていた。 昨夜いつにも増して紅茶を楽しんでいたせいだろう。
それを繰り返して、結局一睡もできぬうちに空が白んできた。 仕方ない、早朝の散歩としゃれこもうか、とウィルバーは着替えて外に出た。
庭に降り立った瞬間、微かに聞こえる空を切る音。 吸い寄せられるようにそこに近づくと、舞う少女がいた──この家の長女。
つやのある真っ黒な髪を散らして、素早く、時にひどくゆっくりと、身を翻す。 羽根が生えているかのように軽やかに優雅に。
ただのガレージをどこか別の世界と錯覚してしまうほどに美しい。まさに天女の舞だ。
寝不足でぼんやりとする視界は、ただ跳ね回る彼女の肢体だけをクリアにとらえていた。
──そう、寝不足、だったのが悪い。
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