novel | ナノ






*柵の中から



気づけば何もない場所で。
誰もいなくて。

周りにはぐるりと。囲む、柵。

高さだって登れはせずともそうあるわけじゃない。壁ではないから視界も開けてる。

なのに、世界から断絶されたような。

あたしと世界は隔絶されてるのだと絶望が静かに足元からせり上がってくる。

微かに残る、それでも今にもかき消えそうな希望を胸に、柵の中から手を伸ばす。

虚空に向かって、腕を伸ばして、でも、肩が当たって止まってしまう。限界まで伸ばしても届かない。


──何に?


分からない。

解らない判らないわからないワカラナイ。


でも、だけど、なのに、求めるのがやめられない。

何があるかも知らないのに、手を伸ばす。



──そんな夢をずっと見るの。



『おねがい、たすけて』
『あたしあんたにあいたいわ』






2010/07/10