デパンドル

「カイリ、?」

主の宿敵である空条承太郎と、その一行。彼らを出迎えに上がった私の目に飛び込んで来たのは、ずっと前に私の前から姿を消したカイリその人だった。

「テレンス」

私の名を呼び、まるで飛び込んで来いとばかり両手を広げるそれは、紛れもなくカイリで。
何故、なんで、今更。歯を軋ませて、目を瞑る。今は主の命令が第一だ。空条承太郎を倒さなくては。
背後にはケニーGだって控えているのだ。奴にカイリの存在をDIO様に伝えられるのはまずい。
用意していた台詞をつらつらと述べ、承太郎のその利き腕を人質にすると、打合せ通りに開いた床の穴へと、機を逃さんばかりに承太郎とカイリを引きずり込む。

「承太郎っ!」「ッ、カイリ!」

余計なものまでついてきたが、仕方があるまい。
誰が来ようとこの戦いを制するのは私だ。

海に浮かぶ孤島に並んだゲーム機。

承太郎とカイリにくっついて降りてきたのは、ジョセフ、花京院、ホル・ホースの三人か。ふん。まあいい。このメンバーなら花京院辺りから攻めるのが得策だろう。

まずジョセフの問いに全て、イエス、ノー、答える必要はありません で返し、私を倒さなければ先へは進めないことを理解した奴らに私のコレクションを見せてやる。

「みなさん魂を賭けてゲームをしませんか?」

人質にした承太郎の右腕。
私の敗北で腕を話すことを約束し、対戦相手に花京院を指名する。

花京院は承太郎とジョセフ、それからカイリに目配せをすると、進んで前へと出てきた。
エフメガを希望し躊躇なく魂を賭けると口にする花京院に彼のための人形を見せつけるが、奴が怖じ気付く様子はなかった。ふふ、その方が張り合いがある。

ゲームを始める前にカイリをちらりと見れば、カイリは無表情で此方を見ていた。

「っ」

下唇を噛んで画面へと向き直る。
...さあ、ゲーム開始だ。






事前にテレンスの手を伝えてあったため、花京院とテレンスは五分五分の試合を繰り広げていた。でも多分花京院は負ける。勘。自分でいうのはなんだけど俺の勘はあたるんだよな。

「カイリ、お前なんでそんなに無表情なんだ...?」

「どんな顔していいかわかんないんですもん」

テレンスに会えた喜びとか、この後無事に連れ出せるかの不安とか、花京院との互角の勝負で冷や汗かいてるテレンス可愛いなとかごちゃごちゃごちゃごちゃ。
どんな顔をすれば分からないからこの際能面を貫きます。

「ホル・ホースさんはほんと躊躇いなくこっち飛び込みましたね」

「誰が好き好んで暗黒クレバスに挑みに行くってんだ。俺は楽に金貰える方を選ぶぜ」

「楽って言ったって援護はちゃんとよろしくお願いしますよー」

「あいよ。アンタがいなけりゃこっちだってあぶねえんだ」

煙草を吹かしたホル・ホースの左腕が、俺の肩にかけられる。
頼りにしてますからねと笑ったその時、ゲームのゴール音が波の音と共に聞こえた。

顔を上げた俺の目に入ったのは、テレンスの崩れ落ちそうな眼だった。









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