街のパン製造機
「あらやだ、捕まっちゃった」
スプレンディドにライオンの親が子にでもするように首根っこを持ち上げられ、嘆息する。
意気揚々とランピー管轄の宝石店(無人)に赴くも、瞬時にガラスに突っ込んできたヒーロー相手にこの通り。
シフティとリフティも既にドントに惨敗。このままだと、今日の夕飯は無しだ。
「捕まっちゃった、じゃないよ、もうカイリ君」
「だって、食べるためだもの。仕方ないでしょう?それとも飢えて死ねって?ああ酷い!ヒーローのせいで今日も私たちは野垂れ死ぬんだわ…!」
「誰もそんなことは言ってないだろう!?…もう、また冷蔵庫の中身がなくなったのかい?」
どうやらうちの冷蔵庫事情は、スプレンディドにはすっかり見透かされているらしい。呆れたように尋ねてくるヒーローさんに、にっこり微笑む。
「うん」
「…パン焼いたら食べるかい?」
「もちろん!さっすが話がわかる!スプレンディドのそういうところ大好きよ!」
「っ」
なぜだか後ろでスプレンディドが息を呑んだ。
「スプレンディド、甘やかすな」
「ドント、うるさい」
「うるさ…!?」
首根っこを離してもらい、ドントにふん縛られた双子の元へと駆け寄る。
今日の飯はパンであることを伝えると、ぐちぐち言いながらも二人は承諾した。
スプレンディドのパン美味しいもんね。
「ねえスプレンディド、私、胡桃パン食べたい」
「胡桃かあ、切らしていたな。ドント、取って来てくれるかい?」
「断る」
「やっだ、カッコイイヒーローのドントさんなら二つ返事で取って来てくれると思ってたのにぃ!」
「掌返しが早いなお前は!!?」
渋々ながらも胡桃を取りに、ほぼほぼヒーロー達のせいで倒壊した宝石店から去っていくドント。このヒーロー二人は、なんだかんだで優しい。ヒートアップするとビームとか打ってくるけど。今日も建物ごと殺されそうになったけど。うん、優しい。
「あ、食パンも欲しいな。日持ちするように冷凍してしばらく飢えをしのごうと思うの」
「…もういっそ働いてくれないかい?君たちのせいで胃痛が絶えない」
そう言って、スプレンディドは眉間の皺を押さえる。
「働く?いいよ、今晩いくらで買ってくれる?」
なーんちゃって。
「…カイリ君、私、そういう冗談は好かないな」
「ごめん」
「俺らも嫌い」
「ごめんって」
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