※n順後で元暗チ主
人に好かれたいなら、自分が"良"にならなくては駄目。"陽"にならなくては、駄目。好かれたいのなら、ね。ひらひらと私を殺したあの人の写真を空で泳がせつつ、私の足の爪に塗料を塗る足元のブロンドへと視線を落とす。
「人に好かれたいのか?」
「当たり前じゃない。きっといないわ、人に好かれたくない人間なんて」
「へえ。けど俺はあんまりそういうの興味ナイなァ」
「あら 私にも?」
「前言撤回。好かれたいです」
「ふふ、いい子」
ブロンドの髪を手繰り寄せてその額に唇を寄せれば、その綺麗な顔が擽ったげにくしゃっと歪んだ。
「マニキュアがずれちゃう」
「私は構わないわ」
「もう、俺が塗ると思って」
「メローネが好きで塗ってるんじゃあない」
「だってカイリの爪先くらい俺の色に染めてやりたいんだもの」
「あら それでメロン色だったの」
綺麗な緑色で飾られた足の先っぽ。イエローグリーンかしら。爪先くらい、だなんて可愛らしい。とっくの昔に私は貴方の色だというのに。
「アンタは今も昔もふらふらと気が多いからな」
ちらり、とメローネの視線が私の手の中の写真へと向かう。あらまあこれはもしや嫉妬かしら。目を丸くしてメローネを見る。今度は彼が甘えるように足に口付けた。
「いっそカイリを殺したら俺も"特別"になれる?」
「冗談。メローネはとっくの昔に私の一等じゃあないの」
「なら俺以外に好かれようとなんかしないでよ。俺はカイリが陽でも良でもなかろうが愛してるぜ」
嬉しいことを言ってくれる。可愛い人に足にすがられてそんな事を言われたら、はいとしか言えなくなってしまうじゃない。
私を殺したその人の写真を握り潰して、放り投げる。
「愛しのメロンちゃんがそういうならそうするわ」
人好きされない"悪"で"陰"のまま、私は貴方を愛します。
prev|next