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「変わってないなぁ」
「うるせェ」

バタン、と玄関のドアが閉まる音と同時に軽い結界が張られる。今まで運んだ荷物を今度は荷解きするのに手伝う事になって俺は久々にナルトの家へお邪魔する事になった。けど、案の定と言うか…本当に何も無い部屋だなぁ、なんて思う。備え付けの箪笥や机はあっても、他は何もない。寝室にだって備え付けのベッドがある位だし。って、あれ?

「ナルト、ベッドは!?」
「ああ、消えた」
「消えた!?」
「知らねェよ、アイツをジジイに突き出した日から消えてたんだ。だから隠れ家で寝泊まりしてた」
「え…チョット…って事は、そのベッドも名前ちゃんが消したって事!?」
「そうなんじゃねェの」

驚きを隠せないままでいたけど、消えてしまったものについてどうこう考えても仕方ない。名前ちゃんは隠れ家に移されてからナルトの家に来てはいないだろうから、確認のしようも無いだろうし。多分来てたとしても聞かれてないからってナルトからベッド消えたなんて言う事も無いだろうなー。溜息を溢して、この話は一度切る事にした。キリがない。ふと目が行った冷蔵庫を見て、ああ、きっと中身はほぼ空なんだろう。随分前にお邪魔した時も水とお茶と消費期限切れの肉か何かが入ってただけだったし。なんて思った俺の反応を見てかナルトが鬱陶しそうな顔をした。何時だってナルトはこうだ。何があっても動じないし、少し表情を見せたかと思うと不機嫌そうな顔だったり今みたいな鬱陶しそうに感じてる顔。名前ちゃんがやって来た初めの頃なんかは偶に笑ったりしてたけど。それも名前ちゃんをからかってる時や名前ちゃんの右手の能力云々を話してる時だの、なんだか特殊な話の時だけだったと思う。

「ナルト、偶に食材とか持ってくるから、ちゃんとしたご飯食べるんだよ?」

この家では結界が張られていて、一応今は周りに忍が居ないからナルトと呼ぶと、やっぱり気分を害したのか返事は無かった。暗に名前ちゃんが作らなくても、と心の中で付け加えてたのもナルトには伝わってると思う。玄関先に置いてあった風呂敷をリビングへ移動させて、更にそれらを隠し部屋に移動させる。先に隠し部屋を開いたナルトは忍具の手入れをしていた。其々風呂敷を解きながらナルトの指定する場所へ片していく。元々隠れ家の方には予備程度の数しか持って行ってなかったらしいけど、それでも悠に百は超えてる忍具や札の数に顔が苦笑いになる。新術の開発が好きなのは分かるけど、それを試される任務の標的が少し可哀想に思う、なんて口にしたら俺が実験体にされそうだから言わない。
片付け終わった風呂敷を畳んで、新しい風呂敷を解くと、中には日用品が顔を覗かせていた。

「ナルト、これは?」
「…あぁ、それ名前のだ」
「名前ちゃんのをナルトが持って来たの?」

軽く動揺している俺を見て、ナルトが鼻で笑った。あ、やっぱ俺の邪推だったのネ。

「名前は此処へは呼ばねェし住ませねェよ」
「だーよねー。一瞬焦っちゃったよ」

だろうな、と一言返されて、俺の心は平穏を取り戻した。でも、なんとなく前から思って居た事が悶々と心の中に残る。日用品の風呂敷を結び直しながら、それとなくナルトへ疑問を投げてみた。

「ナルトってさ、名前ちゃんの事、どー思ってるの?」
「…あ?」

ギャリッ、ピキ、カツーン

三拍子で立った音の主は床で力無く無残に横たわっていた。何で質問しただけで忍刀が折れてるのカナー、とか現実逃避を開始した冷や汗ダラダラの俺をナルトが不機嫌そうな顔で見ている。周りの空気が段々冷たい上に重くなっていく感覚がし始めた時には俺死ぬのかな?って思ったけど多分シカマル辺りならそう思うのも無理はない。って言ってくれると思う。うん。

「お前、先刻から何だ?名前、名前名前って…まさかお前、惚れてるのか?」
「!?いやっ確かに可愛い子ダナーって思ってはいるよ!?ご飯美味しいし優しいしちょっとドジっ子だけど!」
「良く見てるじゃねェか」

言いながら、床に落ちた破片を拾うナルトの動作にも尚心臓はバクバクと早鐘を打っている。いやいやいや、本当にいい子だと思ってるケド!!惚れてるかと問われるとそうではないよ今は!!そう答えるとナルトが溜息を吐いた。

「俺が心を、許し掛けたのは事実だ。だがその緩みが今回の黒ずくめに侵入を許した事になったし、結果名前を奪われた」
「…それでも、結局は取り戻せたよ?」
「慌てて策を練ってな。俺はまだ、弱い。木の葉の連中の想像より早く成長して、少し禁術が扱える程度。それだけだ」
「結構充分だと思うケド…」
「"最強"の称号にはまだ遠い」

心の内を話し始めたナルトにほっとして気を抜く。それでもナルトの気は治まっていないようで、無表情ながらも苦い気持ちで居るんだと少しだけだけど分かった。
気を許しても、何処かで抜かりが出てしまう。それは自分が何処までも子供で、心身をつなぐ成長は越えられないと理解しているから。幾ら身体を強くしたって、憎悪を向けられながら生活していた自分に何の損得も無しに話し掛けて、ご飯を作ってくれて、此処に居ろと言った場所で生きて居てくれる。そんな存在が居るなんて全く思いもしなかっただろう。ナルトと境遇は違えどシカマルやヒナタも、ナルトと似た孤独を感じて側に控えてるんだろう。だからこそ、あの三人が監視対象を弄ばずに過ごしている事が俺やヤマトも、遥かは三代目までもが驚いていた。三代目は薄々勘付いては居たが憶測は憶測でしかないからのう、だなんて笑って言いそうだ。

「…でもサ、俺が心配してるのはこれとは別なんだよネ」
「あ?」
「だって、ナルトは決めたらソレを通すから良いだろうケド。もし、名前ちゃんが君達三人と離れて暮らしたくない、なんて訴えたら即刻断れる?」
「…」

ああ、成る程。なーんて表情をして、ナルトは重々しく溜息を吐いた。勿論ナルトは断れる。寧ろ断らない意外どうしろってんだ、の勢いで今回の黒ずくめ事件で自分の子供臭さに気が付いてるし、自尊心に傷を負ったから。でも、他の二人は?俺の予想としてはヒナタ辺り、何だかんだ言って一番絆されてる気がするんだよネ。本人に言ったら殺されるから言わないケド。シカマルだって、名前ちゃんには少しの差分だけど甘いから週一、又は月に二回三回なんて火影邸で過ごしそうだ。…まぁ、これらは俺の憶測でしかないんだけど。

「彼奴等だって黒ずくめ共に色々やられてんだ。テメェを甘やかす事なんかしないだろ」
「うーん、ナルトの場合はハッキリしてるからそう言い切れるんだけどネ…」

ホラ、二人共やさしーから。って、素直に事実を告げただけなのにさっき拾った忍刀の破片を投げられて、俺の口布の一部分が音もなく裂けた。少し後ろで忍刀の破片が柱に突き刺さった衝撃を流しきれずにたわんでる音がしてるのが聞こえて、今日一番で泣きたい瞬間が決まった。

「テメェは口じゃなくて手ェ動かせ」

何時も通りのポーカーフェイスで言ってのけるナルトの鬼畜さを見に染み込ませながら、さっきよりも俊敏な動きで残りの片付けに勤しんだ。









どういうことですか、それってつまりあれですか、私やっぱり頭おかしくなってるって事ですか!!!

幾ら声を荒げたって、目の前の湊先生によく似た人には何の罪もないのに。肩で息をする私を見て、目の前の男性は表情を曇らせた。

「少し落ち着いて。確かに俺は、君の知る湊じゃないよ。ナルト達の居る世界の方のミナト。それに君は頭が可笑しくなってるんじゃないし、これからもそうなる事は無いから安心して良い。」
「どうして、どうしてそう言い切れるんですか!私の目の前で、ハツさんは…!」

また激情が湧いて、目の前の男性、ミナトさんを傷付けようとする。やっと現れた話が出来る人に安堵して、今までの不安と先の不安をぶつけている。自分の弱さと解消されない不安に、涙が溢れてしまう。見ず知らずの人にこんな状態を見られるのが恥ずかしくて、咄嗟に手で顔を隠した。本当に醜い。自分勝手に感情を撒き散らして、今の状況を教えに来てくれた人に八つ当たりなんかして。その末泣き出すなんて、本当に人として汚い。せめて声だけは上げない様に息を止めて、涙を止めようとするけど中々止まってくれない。早く止まってよ、頼むから、なんて自分で自分を諭し始めた瞬間、温かいものに体が包まれる感覚がして、ハッとした。

「本当にごめん、謝っても赦される事じゃないけど…ごめん、名前ちゃん」

直ぐ側で聞こえる声に、ミナトさんに抱きしめられているのだと理解した。間近で泣かれる姿を見られるのはどう考えても恥ずかし過ぎる!グッとミナトさんの胸板を押して離れて貰おうとするけど、何故か逆に力を込められて離れられなかった。何で離してくれないの、この人!お陰で軽くパニックになった私は驚きも混ざって涙が止まっている事すら忘れていた。

「君が此方の世界に来てしまった原因は、俺にあるんだ」
「いい、いいですから!はなしてください、離れてください!!」
「落ち着いて、此処は君の意識下の次元だから、君が此処を離れたいと思ったらその言葉通り何処かへ離れてしまう。そうするとまた、君へ真実を話す時が失くなってしまうから、それは避けたいんだ。」
「わ、分かりましたから!話は聞きます、此処から移動はしません!」
「…うーん…イマイチ信じられないから一部は繋がらせて貰うよ?」

本当に渋々、と言った様子で私から一度手を離したけど、直ぐに右手首を掴まれてしまってそんなに距離を取れなかった。驚きのお陰でバクバク音を上げていた心臓は未だに落ち着きを取り戻してはいない。先程とは違った意味で肩で息をする私を見て、ミナトさんは大丈夫?と心配そうな顔をした。あの、原因が何を言ってるんですかね。

「そんなに時間はないから、話を始めちゃうけどいいかい?」
「はい。着いていけるよう頑張ります」
「ん!よし。さっきも言ったようだけど、君が此方の世界へ来てしまった原因は俺にあるんだ。事の始まりは話すと長いんだけど…要約すると、時空間忍術での新術を色々と、ね。開発して、ソレを試してたらある異次元と繋がりが持ててしまったんだ。」
「はあ…凄い重要な話の内容を要約されましたけどなんだろう…誰かとデジャヴを感じる気が…」
「で、懲りずに俺も何度か新術に挑戦したんだ。まあ、それが今こっちの世界にある"歪み"の原因なんだけど…その歪みが何なのかは判る?」
「いいえ、サッパリです」
「だよねぇ…分からずに処理していたのも凄いんだけど…。君のこの、右手。物を消すよね?」

グ、と掴まれていた右手に力が込められて、私の目線まで持ち上げられる。真剣な色を灯すミナトさんの瞳に気圧されて、思わず生唾を飲んで頷いた。実際、リボンやらハンカチやら日和ちゃんの術やら消したわけだし。

「それらが先程言った、"歪み"だよ。俺が異空間忍術で、繋がる筈の無い異次元、異世界と繋がってしまった。更に別の異空間忍術を試したりしたと言ったね?…その余波を受けたものが君の世界のモノとリンクして、"歪み"になってしまったんだ。」

えぇっと。とにかく、何を言っているのか分からないです。私は微塵も隠しもせずに顔に出すと、ミナトさんが困ったように笑った。ん!じゃあ更に整理して説明しよう。と告げたミナトさんが更に噛み砕いた言葉で説明してくれた。

簡単に言うと、二つの世界が繋がるって事は、地球が世界ごとにあるものだと考えると、私の居た世界、此処の世界だけでも地球が二つ分ある事になる。そこでミナトさんが異空間忍術で私の居た世界に干渉する度、所謂オゾン層辺りで双方の地球のエネルギー同士がぶつかり合うレベルの衝撃が産まれるとの事だけど、そのエネルギーがそっくりそのまま双方の世界へ返るのならまだ物理的にも理解出来るのに、例のオゾン層辺りでぶつかり合うエネルギー同士がぶつかり序でに共鳴してしまい、一瞬でも融合を開始してしまうらしい。その融合は異なる世界同士だから完全にはならないけれど、一瞬でも融合してしまったら其々の世界に"同じ"ものが産まれてしまう。それがミナトさんの言う"歪み"の正体。それらは無機物だったり有機物だったりするけれど、私達人間からすると『物』の定義から外れる"歪み"は生じていないらしい。要するに、人以外の物。言葉や風など、目に見えないものに"歪み"は産まれていない。

更に、その"歪み"とやらは私の元居た世界へは産まれないらしい。何故かと聞いたら、事を起こしたのは俺自身で、俺のチャクラが息づいているのがこっちの世界だから。つまり、初めにエネルギーをぶつけたのはミナトさん側の世界だから、"歪み"が此方だけに産まれるのはある意味因果応報なんだよ、と自嘲していた。

「現時点では、君以外の人間の"歪み"は確認してないから、そのエネルギーは人体にまで影響は無いみたいで良かったよ。」
「はい先生、質問です!」
「久振りだなぁ、先生なんて呼ばれるの。はい名前ちゃん」
「私以外ってどう言う事ですか!?ていうかそれとこれと右手がどう関係あるんですか!?」

今ここに学校の机と椅子があったら間違いなくドン!と手をついて立ち上がってるだろう、私。気持ちというか頭の中ではそんな感じで物申してるけどさ!質問を投げた私の問いに、ミナトさんがにっこりと笑顔を浮かべた。

「それも"歪み"だよ。」
「え?」
「ん?だから、その右手の作用、又は能力は"歪み"そのものだよ。」
「ええええええええ、それじゃあ思いっきり人体に影響出てるじゃないですか!」

持ち上げられた手首がゆっくり降ろされると共に私のテンションも下降していく。さっき人体に影響は無いって言ってたからてっきりナルト達の世界に順応してチャクラが生じたのかもとか思ってたのに…!がっくり項垂れた私へ、ミナトさんが再び言葉を落とした。

「うん…その事なんだけど、それも俺の所為なんだ。」
「と、いいますと…?」
「君の世界へ繋がりを持ったことで、僕と似た僕と出会ってるよね?」
「はい…って、まさか…!」
「ざーんねん。その湊先生は"歪み"じゃない。れっきとした人間だよ。ただ、何て言うのかな…やっぱりどの世界にも自分と似た人が居るって事で、ミナトと湊、二人の影響をより受けやすくなってしまったんだね。湊は俺でもあるし、ミナト…俺は湊でもあるって事。原因は君がまだ元の世界に居た頃にあったと思う。だから君は、僕が蓄積させてしまっていた"歪み"と一緒に、こっちの世界に来てしまったんだよ。」
「…そういう理屈で言うと…私が目覚めたのはナルトのベッドの上だったから…あの時、ナルトのベッドと私のベッドが融合しかかって、"歪み"になったって事ですか!?」
「正解!そう言う事になるね。目には目を、歯には歯を、毒には毒をで"歪み"には"歪み"を。ベッドと一緒に次元を超えてしまった君も、その余波を受けてしまった結果が右手の"歪み"と考えていい。だから君には"歪み"が消せる。所謂調律ってて奴が出来てしまうんだよ。」

まとめよう、結論。全部ミナトさん(好奇心)の所為。

深々と溜息を吐いた私の頭を、ミナトさんがわしわしと撫でた。さっきまで掴まれていた手首は今自由になった。

「あともう一つ、重要な事を教えなきゃならない」
「え、まだあるんですか?」

それもミナトさんが原因じゃ…と訝しむ私にまた困ったように笑って、これは違うよ。と告げられた。

「あの二人の正体。君が名付けた、昴と遥でいいんだっけ?」
「…!」

二人の名前を聞いて体を強張らせた私の様子を見てか、頭を撫でる手が移動して優しく頬に触れた。

「あの二人は、怖いものじゃない。寧ろ君を守ろうとしている存在だよ。片方は君のもので、片方は僕のもの」
「どう言う事、ですか?」
「似ていないかい?二人とも、君の良く知る誰かに」
「…」

ミナトさんに言われるまま、私は考える。
昴は感情をそのままに表す。激情とも言える時もあるけど、それが本心かと問われれば返答に困る…かもしれない。あの日、本当は優しい事を知ったから。遥は感情を抑えると言うか、表に出さない。その癖行動だけは確実で、言葉よりも行動で語る。あの日の別れ際に見た遥が一番感情を表していた。あの感覚は、確かに言われてみれば似ている気が、する。

「…昴は、ナルトに、似ています」
「…うん。正解」
「遥は、その…他の誰も知り得ないんですけど、私の弟に、似ています。」
「そうだね。君が言うなら、その通りなんだろう。」
「なら…昴はミナトさんのもので、遥は…私の…」

そう言った私の不完全な問いに、ミナトさんは頷いた。私の頬にあったミナトさんの手が離れる。向き合う形になって、ミナトさんの瞳がもう一度真剣なものになる。

「さっきの地球云々の説明の時も言ったように、君以外の人から"歪み"は確認していないって言ったね?」
「…はい。」
「そう。つまりは、そういう事だよ。昴と遥は、人ではない」
「…」
「ナルトを一人にしてしまった俺の後悔が、今もこうして形を成したように…昴はあの世界に居ない、俺自身の…"歪み"として、ナルトを見守っていたんだ」
「そんな…昴が象られてからどれ程の時間が経っているんですか?」
「ナルトが産まれてから同じ年数、だと思うよ。詳しくは俺も分からない」

あまりにも衝撃的過ぎて、言葉が中々紡げない。つまり昴は、ミナトさんの遺志。何故ナルトに似ているのは分からない。けどあの日、私を皆の元へ返したように感じたのは間違いじゃなかったんだろう。

「そして、君の遥は、君の弟君の"歪み"。君の弟君はその…言葉は悪いんだけど、シスターコンプレックス持ち…なのかな?」
「はい。シスコンです。鬱陶しいくらいにシスコンです。」
「ん!その真顔具合を見るに、凄く仲が良いんだね!」

にっこり笑顔を浮かべるミナトさんが、天然なのか確信犯なのか…どちらの可能性も捨て切れなくなった瞬間ですよ今の。

「で!恐らく、弟君は感覚的に君が元居た世界に居ない事が分かったんだろう。君の部屋にでも行けば当然、君のベッドには"歪み"の痕跡があった訳だし、弟君が触発されても可笑しくはない。最も、弟君も湊先生と接触があれば尚更の話だよ。君が今、元居た世界でどうなっているのかは分からない。俺ももう忍術は使えないしね…」
「そうなんですか…じゃあ此処からはどうやって出るんですか?私は意識すれば抜けられるでしょうけど、ミナトさん、来る時は忍術使って此処に来たんですよね?」
「ざーんねん。名前ちゃん、頭がいいからもう気が付いてたかと思ったけど、そういう所は抜けてるんだね。」
「心外な!どこも抜けてませんよ埋まってますよ!」
「うん、やっぱり抜けてる。ナルトの事、宜しくね。君になら安心して任せられそうだ。」
「任せる?私を預かってくれてるのはナルトなんです…け…ど……って…あれ、居なくなっちゃった」

瞬きした瞬間に消えるなんて、忍者はやっぱ凄いなぁ、なんて思ったんだけど、あれ?私ミナトさんの素性聞いてない?初めの混乱と湊先生に似てる事件の後に湊先生はミナトさんでミナトさんは湊先生って事を知って何時の間にか安心してた?あれ?えっと、ミナトさんて結局誰?!いやミナトさんだけど!!素性!素性全く知らない!でも私が異次元から来た事とか知ってるし昴や遥の事も知ってたし!恐るべしミナトさん。でも異空間忍術って言ってたから、忍者なのは間違いない!やっぱ忍者って皆エスパーなんだ。これも間違いない。それなら此処から出たら、蒼や日和ちゃんや佳鹿くんに聞けば大丈夫。うん。多分。素性知らないまま話してたの言ったら怒られそうだけど。

「よしっ!」

此処を出る!

心の中と実際の声を同時に、大声で叫ぶと急激な眠気が私を襲って、眠気に勝てる方法なんて知らない私は、意識下なのにそのまま眠気に身を委ねる二重の眠りに就いた。








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