閑話休題



▼夢主が右手の能力を発揮した翌日



「食べたくない」
「ンなこと言うなよ、毒も入ってねーって」
「即効性じゃないだけかも」
「…俺が初めて体内にチャクラ膜張らずに食ってから三日は経つが」

しゃくしゃく、聴き心地の良い音を立ててナルトがレタスを咀嚼する。そのレタスサラダに使われているドレッシングはあの人が作った自信作だと鼻高々に今朝言われた。私に向かってよく笑顔で居られたものだと思う。ドレッシングはレモン汁に塩と胡麻油を垂らして、隠し味にまた何かの調味料を入れていたのを隣で見ていたから丸々レシピは盗めてしまうけどそんな事気にも留めずに私が隣に居るだけで浮かれていたあの人の緩み切った顔に今でも腹が立つ。当の本人のあの人は外で洗濯物を干しているからこの会話は聞こえていない。私からすれば聞こえていても良いのだけれど。

「ヒナタが疑いてぇなら止めねーけど」
「…進んでやってる訳じゃないわよ」
「安心しろとまでは言わねェが食えるもんは食っとけ、町じゃ変化でもしないと安心して飯食えねェだろ」

…それってあの人の料理は安心できるって事じゃないの、そう思ったけど余計な事を言うとナルトに何を言われるか分かったものじゃないから口を閉じる他なかった。目の前のレタスサラダと手作りのたまごサンド、ポタージュスープと言う聞いた事のないスープをまじまじと見る。普通に私達の知らない料理を身内でもないのに出すなんて何考えてるのかしらあの人。

「総合的に評価するなら、カカシが好みそうな味付けだぞ」
「あの変態好みって事は…素材の味を活かすって事ね」
「そうとも言う。食っとけ」
「…分かったわよ」

そこまでナルトに言われたんじゃ意地を張るだけ無駄な事だと悟った。これ以上駄々を捏ねれば多分私が嫌う任務を沢山頼まれるだろうし。とりあえず未知のスープは後回しにするとしてサラダから口に運ぶ。その様をシカマルがニヤニヤしながら見てきているのにイラついたけど気にしたらもっと面倒な事になる。無視しよう。

「どうだ?悪くねーだろ」
「そこでシカマルが偉そうにする理由が分からない」
「久々に朝から栄養取れんだ、今の内だ今の内」

しゃくしゃく、新鮮なままのレタスの音と食感が何とも言えない。ドレッシングもまぁ、合わない事も無いけど私的には少し酸っぱいと思う。もそもそ食べているつもりでもいつの間にか空になっていたサラダの皿を見てバツが悪なる。もうここまで来たなら残りのサンドとスープも飲まなきゃいけないんだろう。さっさと食べ終わったらしいナルトは食器を流しに片付けていて、シカマルは残りのスープをちびちびと飲んでいた。

「すげーよな。そのたまごサンドに使った卵の数を考えてみると」
「そんなに多くなかったと思うけど。幾つか茹で卵にしてもガチガチに固くなければ黄身はペースト状に出来るし」
「ふーん」

軽くトーストされているパンのサク、と言う食感もサラダとは違った意味でクセになる。悔しいことにこのたまごサンドはとても美味しく感じる。それを真っ向から認めたくなくて、未知のスープを思い切り飲んだ。

「…分かるぞヒナター、美味いよなコレ。一瞬俺も言葉に詰まったから安心して良い。今日のMVPはコレだ」

そう言ったシカマルがマグカップをくい、と傾けて何時ものダルそうな顔で笑った。たまごサンドと絶妙な味わいでピッタリ合うポタージュスープに少し裏切られた気持ちになるけど、その美味しさに私のモヤモヤは吹き飛んでしまった。たかが食を満たすだけで気分が変わってしまう自分の現金さが恥ずかしい。そう思っている所で玄関からギィイ、とドアの開く音がした。空のカゴを持って活き活きとした笑顔でおはよう!と言ったあの人の表情は先日からのものと何ら変わりないもので。

「名前、ヒナタがたまごサンドとポタージュが大好きだってよ。俺はドレッシングも好きだけど」

一瞬の気を抜いた隙にシカマルがそんな事を口走る。お陰で私の心は地面に叩き落とされた。だから、なんで余計な事言うの!

「えっほ、本当!?」

ほらこうやって、あの人の傷付けてはいけないような、そんな気を起こさせる眩しい笑顔が咲いて溢れた。







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右手でヒナタのチャクラ消した翌朝の出来事。
夢主はご飯作るの上手い設定です。

131107




bkm
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