08





「ふぅん、それで?私達が嫌々あの雑魚共の始末をしてるとでも思ったわけ?自分の意志も持たずに?蒼からの命令に背くと?ええ確かに私は余程の事が無い限り蒼の命令には背かないわよ。今回の件については自分の意志で動いたつもりだけど貴女はそれが不服だったみたいね、私達の力は必要無いって言いたいの、そう。そう言う事ね。へぇ」

大ピンチです。かなり大真面目に、大ピンチなんです!!
目の前には瞳に怒りを湛えた日和ちゃんと、何故か微笑んだまま表情を崩さない佳鹿くんが居て、背後には仁王立ちした蒼が。因みにテーブルの上には、すこーしだけ焦げた肉じゃががあったりする。なんて言うかその、すごく、いたたまれない。目を泳がせていると、日和ちゃんの握り拳がテーブルを叩いた。ドン!とかじゃなくてメリッて音がしたのは気にしない。序でに叩いた箇所が軽く凹んでるのも気にしない。

「私が何を言いたいか、貴女分かってるの!?」
「…いえ、全く」

そう言うと日和ちゃんが深く溜息をついた。ふ、ふん、そんな物理的な脅しは効かないよ。実際私が悪いことしてるんだし、何も日和ちゃん達を恐れる必要は無い!だから顔を上げるのよ私、頑張れ私!

「物理は効かないらしいから、蒼どうぞ。」

ウワァアアアアア全力で死ぬ他無いじゃないですか日和ちゃんんん!!サァアッと血の気が引いて行くのが自分でも分かった。何も言わずに微笑むだけの佳鹿くんも充分怖いけどね!何よりこんな時でも無表情な蒼は一番!怖い!よ!チラ見しなけりゃ良かったよ!そう思った直後に後ろからの重圧が更に掛かった気がして、じわ、と出てきた涙で視界が滲んだ。

「泣ける余裕があるみたい。なら話しても問題無いわね?…私達がいつから、人の命をこの手に掛けてるか分からないでしょう?勿論貴女は知る必要なんてないの。それは何故か、貴女は、忍じゃないから。」

「更に言えば、貴女はこの世界の住人でもない。此処については、生きてく上で必要な事だけ知ればいいの。私達が殺しをする事に、貴女に責任は無い。コレは私達が選んで、進んで、生きて来た道なの。…だから、無理にお姉さん面しないで、いいの。」

「貴女の作るご飯は美味しい。毒や催眠薬も、痺れ薬も入ってないし。お風呂はいつも綺麗だし、監視も無い。家の中も清潔で埃っぽくない。換気もされてて、陰鬱な空気が溜まってないし。…勝手に部屋に入られるのは気が進まないけど、仕方無いと思う事にするわ。」

つらつらと、流れるように日和ちゃんが言葉を紡いでいく。私はその言葉達を聞き漏らさないように、グルグルと頭を回転させて、ゆっくりゆっくり脳に馴染ませる。意味を理解するのに時間は掛からなかった。けれど、肝心な日和ちゃん達の気持ちが分からないままで、だけど単純な私は最後の方に紡がれた、ご飯が美味しいだとか、家が清潔だとか、そう言った言葉に意識を持って行かれて。迷惑を掛けているのは私なのに、その私を気遣ってくれるまで、日和ちゃん達が赦してくれている事がどうしようもなく嬉しくて、でもその日和ちゃん達の気持ちが分からない自分が許せなくて、なんだか色んな考えがぐちゃぐちゃになってしまって、涙が次々と零れてしまった。

「…おい、こんなに泣くなんて聞いてないぞ」
「私も聞いてないわ」
「俺は何も…言ってねーぞ。主犯は日和だな」
「佳鹿最低」

繰り広げられて行く会話と、ちょっと動揺してるのか少し早口になった蒼と、声が小さくなった日和ちゃん。歯切れの悪い佳鹿くんの言葉で更に泣けてきてしまった。本人達は気付いていないけど、こうして私の様子を気遣ってくれる所は純粋な7歳児そのものだと思う。ふぅ、と息を吐いてから指で涙を拭って、顔を上げると日和ちゃんが肩の力を抜いたのが見えて思わず少し笑った。日和ちゃんが頬をちょっとだけ赤くさせて何か言おうとした瞬間、玄関が開いてカカシさんが現れた。

「来たな、諸悪の根源」
「俺が!?蒼に追い出されてからずっと暗号解読してたんだからね!?流石にアレで名前ちゃんの前から姿消すわけないでしょーよ!」
「黙れよ」
「酷い、酷いよ蒼…言葉もだけど暗号を今まで俺が遊んできた女の数にして更に掛けたかと思えば割った数式をチャクラ列に直させるなんてさ…拷問だよ…」
「あら、随分温い暗号にしたのね」
「カカシ如きに新しく暗号を考えるのが面倒」
「そうね」

憐れ、カカシさん。見事に蒼と日和ちゃんの言葉のサンドバックになってる。そのやりとりを眺めていると不意にわしわしと頭を撫でられる感覚。手を辿ると佳鹿くんのなんとも言えない表情があった。撫でられたお返しに笑い掛けると、締まりのねー顔、と佳鹿くんも笑った。

「名前ちゃん!」

佳鹿くんに撫でられてボサボサの髪の私を、カカシさんは気が触れたのか正面からぎゅーっと抱きしめてきた。カカシさんの後ろで日和ちゃんがコロスと呟いたのは聞かなかった事にしたい。

「ごめんね、ほんっとうに!まさか名前ちゃんがここまで自分に厳しい子だとは思わなくて…ってこれは言い訳だよね…。試すような事して、ごめん!…でも、」

あの子達の事、俺も本当に心配してたんだ。それは分かって欲しい。最後の方を耳元でそう囁かれて、謝罪云々より、この人はずるい人だと思った。そう言われて許さない道があるって言うの?やっと腕から解放されたから思い切り疑いの眼差しを送ると、困った様に笑われてしまって、私は仕方無く「気にしてませんし、分かってました」と応えた。そりゃもう今世紀最大の不機嫌顔で。けどめげずにありがとーう!なんて言ってもう一回抱きついて来ようとしたカカシさんを蒼が蹴り飛ばして、また玄関の外に引きずって放り投げていた。もしかしなくてもまた暗号変えられたんだと思う。

「さ、焦げた肉じゃがが冷めない内に夕飯食べちゃいましょう」
「…焦がした事も怒ってる?」
「当たり前でしょ、高いのよあの鍋」


どうやら物の判断基準、日和ちゃんと蒼は同じみたいです。





-----------
やっとスレっ子デレた!そしてカカシが必殺遊び人!

131026




bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -