▼ナルト氏火影設定
▼ヒナタnot妻



私は一度だけ、復讐をしようと思い立ったことがある。

その復讐の相手は我が上司であるナルトさん。いや同い年だし、さん付けして呼ぶ必要は無いんだけどこれはナルトさんからの命令の一つで、彼の気が済むまで敬称を付けるように言われてるからそうしている。ちくしょう。そもそも何故そうだ、復讐しよう!なんて思い立ったのかと言うと、先日私が出張任務から帰ったら食べようと楽しみにしていた後輩からの手作りケーキをナルトさんが食べてしまったからで。食べ物の恨みは恐ろしい、と良く言うように勿論私も烈火の如く怒った。怒り狂うとまではいかなかったけど、そこそこナルトさんとは仲が良い方なので結構容赦無く怒りをぶつけていた気もする。

まあナルトさんは何時ものように飄々と私の攻撃を避けまくった上に私への修行と称して軽い禁術だったり私の苦手とする術ばっかり仕掛けてきてたなぁ。ちくしょう。


「不機嫌そうだな、花子」
「べっつにィ」
「素直な奴は好きだぞ」
「うっさい禿げろ鬼畜め」
「俺のオヤジの遺伝子からして、まず禿げるのは無さそうだな」


そしてその結果、見事に復讐を仕掛けたのち返り討ちに遭い、彼の気が済むまで敬称を付ける事と彼の側近になる事を命令され……って言うか火影にもなってワザワザ暗部の控え室にサボりに来た挙句、部下の楽しみを先駆けて食べるって指導者としてどうなのよホント。


「それで、経過はどうなの?」
「あー、問題ねェよ」


そして更に、指導者としてどうなのと問いたいのは、その手作りケーキが毒入りだったことを知っていての行動だった、なんて言うオチがあったりする。なんでもナルトさんは毒薬の研究には自信があるらしく、独特の香りを放つ毒だと知識を得ていたから気付いたとの事。なんか甘酸っぱい香りがしてたけどてっきりフレーバーだと思ってた私本当恥ずかしい。ケーキの持ち主である私は勿論のこと、毒入りケーキだって事に気付いていなかったのがなんとも言えない。すっかり気を許していた後輩が実はナルトさんに付け入るチャンスを窺っていた連中の一人だったとは思わなかった。そこで彼と仲の良い私に嫉妬を覚え、ちょっと毒でも盛って痛い目見てもらおうとしたらしい。遅効性のそれはナルトさんが火影室に戻り、そこへ報告書の提出を済ませた私が、ケーキが無くなっていた事への怒りをぶつけ始めた所で効果を発揮していたらしい。

つまり、彼は毒の効果を受けながらも私へ修行と称した遊びをしていたという、私にとっては何とも言い難い行いをしてくれたのである。その後直ぐに騒ぎを聞きつけたシカマルが火影室という名の戦場に到着し、仲裁とナルトさんが毒を盛られている事を見抜いた事で私の意識は正常に戻り、即効彼をサクラの居る医療班の元へ持って行ったのである。

ーーそしてあの日から2日経った今、私は病室で寝かされている彼の隣で林檎を剥いているわけである。


「あの毒、遅効性の上に身体に残りやすいなんて…あの時直ぐに教えてくれたらよかったのに」
「あの時花子に信じる気がありそうだったら言ったけどな」
「ぐぬ…ちくしょう…」
「まあ結果としてお前に罪悪感を植え付ける良い駒にはなった訳だ」


ニヤリ、笑みを浮かべながら私が剥いた林檎をまた一つシャクシャクと食べるナルトさん。本当に彼は鬼畜である。

サクラの診断では3日も安静にしてれば動いても大丈夫だと言っていたので、退院日は明日。後輩には即日処分が下されていたので心配することは無いと言っていたけど、自分が如何に今まで気を緩めていたかが分かる。里内は安全だなんて、誰も言っていないのに。


「…ナルトさん」
「ん」
「あの日、何で控え室までサボりに来て、ケーキ捨てずに食べちゃったんですかね」
「んー」


モッシャモッシャ咀嚼している彼を見つめながら問い掛ける。勿論食べている間に返事は求めていないけど、彼も私を眺めているので無言の空間が出来上がる。気まずいと言うより気恥ずかしい。

そう。あの日、ナルトさんがサボり場所を暗部控え室に選ばなければ毒で倒れるのは私で済んだのに。火影が毒を盛られるのと、一介のくノ一が毒を盛られるのとでは話が違う。ここ数日モヤモヤと胸中渦巻いていた疑問。


「…花子が帰って来てると思ったからだよ」
「…え」
「息抜きに花子と話でもしようと思ったら控え室には毒の匂いするし、その辺探したらふっつーに保存してある上に毒物入ってる箱には花子の名前と食うなってメモ貼ってあるし、確実に毒に気付いてねェのも分かったし、俺が食えば花子も俺んとこ来るだろうと思ったからだ」


言いながら、ナルトさんの手は私の頭を撫でていた。私の方を眺める目付きも、撫でる手付きも優しくてなんだか色々と勘違いしてしまいそうだ。どういう訳か潤んできた視界に思わず顔を伏せると、頭上から聞こえた微かな笑った声と おかえり の言葉に、堪えていた何かが涙と一緒に流れた気がした。







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ナルト氏が毒に倒れた時からずっと気を張っていたのですきっと。という捕捉無しには分からない話orz






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