▼恋人設定
▼地味にスレナルがバイオレンス
▼減らず口夢主



「なにこれ、何これ、何これェエ!!!」


ビィイン、花子の絶叫が室内に響いた。うっせェボケと返すとウワァ総隊長だマジモンだ嘘じゃないんだーと更に口の減らない返事が返って来たので舌打ちを一つ贈る。

ジュワジュワ音を立てながら辺りに飛び散っている液体の臭いを嗅いで倒れかかった花子に蹴りを入れながら自分の置かれている状況をもう一度思案しようと、掌を開閉させつつ身体の動きを確認するがコレは、何をどう考えても、身体が縮んでいる。自然な流れのまま花子をリビングに放置して風呂場へ向かい浴室内にある鏡を見てみると、そこには確かに俺が居た。

やはり、ちィとばかし縮んでいるが。よう、4歳頃の俺。


「総隊長ォ…もしかして何かの秘薬、試したりなんかしちゃいました?ていうか服着てないも同然…あ、すっごいもち肌」


俺の後を追って来たのか、ニヤァ、と笑いながら告げた花子の頬の薄皮を裂くつもりで投げ飛ばしたクナイはその当人に届く事無く床へ落ちて、カツーンと物悲しい音を立てた。

情報追加。
身体が縮んでいるどころか、同等に能力も落ちた。







「いやーしっかし総隊長が秘薬作りに失敗するなんて思いもしなかったですよォ」
「失敗じゃねェ、手が滑って余計なモンまで釜に入ったんだ」
「総隊長がドジっ子属性とか笑えないですよマジで」
「あ?何?今から任務に出てェって?」
「いやいやいやいや言ってないです言ってないです」


ブンブン、勢い良く首を横に振って総隊長の言葉を否定する。

あれから笑い転げる自分を奮い立たせながらまず私のTシャツを着て貰って、下は即子供用の下着とズボンを買って来た。それに着替えて貰ってる間にシカマルさんに連絡して、今日一日総隊長は我が家から出ないと主張してますと伝えると任務に支障が出ない程度に楽しめよとワケの分からないお返事を貰った。総隊長に言ったら身体が戻ったらな。と言われたけど益々意味が分からなかった。
それにしても今も私にパンチやらキックをかます総隊長だけど全ッ然、そりゃあもう毛ほども痛くないよコレ。ほんとぺしっぺしって感じ。


「ていうか、何作る予定だったんですか?秘薬の臭いヤッバイですけど!」


リビングに戻るなり腹が減ったと言われた為に早めの夕飯を作りながら問うてみると、テーブルに頬杖をつきながらこっちを眺め、不機嫌なのを隠さない総隊長が特に何作るとか決めてなかった、と答えた。適当に面白いモン出来るかと思った。そしたら手が滑って入れる予定外のモンまで入っちまったらいきなり爆発して、その飛沫を浴びたらこうなった。そんでその直後に任務を終えた私が帰宅して来たと。


「いやまぁ、結果として面白いものに出来上がってますけどねぇブフフッ」
「この減らず口が」


ケッ、と効果音でも付きそうな程忌ま忌ましそうに言われた。そして出来上がった早めの夕飯こと、とろふわ卵のオムライスを総隊長の前に置くと、抑えきれないニヤニヤが全面的に顔に出てしまった。瞬間的にキツく睨まれたけど、ぷにぷにほっぺでくりっとした大きな目、そしてなによりふわふわな金の髪が全然恐さを感じさせなくて、余計に私は破顔してしまう。


「うっふふーん、たーんとお食べ下さいねぇナルトくん!」
「テメェ身体戻ったら覚えとけよ、気絶も赦さねェからなオイ」


4歳児にしてはドスの効いた声色を出すなぁと思いつつも不穏なワードを聞いた事は忘れよう。うん。そうか、シカマルさんの言ってた事は気絶も赦されない程の任務に出されるってことか。そりゃ任務に支障が出ない程度って言うわ。
舌打ちしたり足蹴にして来たりしつつもオムライスを口にしてくれてる総隊長の向かいに座って、私も遅れて夕食を摂った。
自分で言うのもアレだけど、卵のとろけ具合上手くいったと思うんだよね。チラリと総隊長を見ると黙々とオムライスを平らげているって事は、今回も料理は大成功って事だ!良かったーうっふふーん、と鼻歌でも歌いそうなほどに舞い上がった私に気付いて、総隊長の目元が僅かに赤くなっていく。


「可愛いですよー、総隊長!」
「うるせェ黙れ」
「あ、でも身体だけでなく中身も4歳児だったらもっと良かったのにー」
「巫山戯んな」
「巫山戯てないですよ!もし仮に、そんな事が起こったとしても私がずっと側に居ますからねー」


ニヤニヤ。破顔が止まらないし止められないのは大目に見て欲しい。と、言っても見てくれないのが総隊長だって分かってますけどねー!

フン、と首を捻って顔を逸らした総隊長がいつの間にか食べ終わっていたらしく、さっさと食器を片しに行ってしまった。あぁ、照れてる総隊長も可愛いです。眼福眼福。ふわふわ金糸が揺れて、大きく背伸びをして食器をシンク横の台に置いた。こっちに戻って椅子に座るかと思ったのに、そのままぶっきらぼうにご馳走様と告げて自室に籠ってしまった。あらら残念。

モグモグオムライスを咀嚼しながら考える。お風呂どうしよう、シャンプーとか高い位置にあるんだけどなぁ。普段一緒にお風呂とか入ったことないし…総隊長が入って来ようとするけど全力で阻止してる私から、ちっちゃくなっちゃったから一緒に入りません?とか言ったら怒るのかなーうーんイマイチ男心とやらが分からない。この前もサクラといのに囲まれて懇々と説教されたし…


「わからんなぁ」
「何がだ」
「男心とやらですよ、一緒にお風呂入りたいなぁ」
「ほー、そりゃ良い事聞いた」
「ん?あれ、嘘、総隊長!?」


ガッタン!と音を立てて椅子から立ち上がる。視線を下ろすとニヒルに笑っている総隊長が私を見ていた。


「部屋篭りしたと思ったのに!」
「いや、よく考えればあれしきの事でヘソ曲げるのも癪だしお前の言う通り風呂まだだしな。食って即横になるのもアレな上にこんなチビのままじゃ新術も秘薬作りも出来やしねェ」
「ちょっと待ってくださいね!!私!!今急いで食べるんで!!!」
「別にお前に暇潰しの相手頼んじゃいねェが」


糸目になった総隊長にそう言われるけど聞こえないフリだもんね!こんな機会、絶対にもう二度と無い!!オムライスをかっ込む私を見て総隊長が大層大きなため息を吐いた。すいませんね大人しくなくて!こんなのが貴方の彼女で!!でもこれも全部カッコ良くて可愛い総隊長が私を惹きつけるのが悪いんですからね!


「落ち着きのねェ奴だな」
「んー、美味しい食材をありがとうございました!ご馳走様でーす!」


ぱん!と空に…絵面的には天井にだけど、手を合わせる。美味しい料理を作れたのはやはり美味しい食材あってこそですから!と何時だか総隊長に言った時は呆れたような肝を抜かれたような、変な顔をしていたなぁ総隊長。次の瞬間その顔見て爆笑した私は悪く無い多分。
自分の分の食器を片付けて手早くテーブルの上を拭いたりお皿を洗ったりしていると私の様子を見ていた総隊長がふーん、と呟いた。


「お前、何時も思うが家事の手際やらは悪くねェよな」
「なんと!もっと褒めても良いんですよ?」
「感情と自分には素直過ぎるがな」


この会話の間もお風呂の支度をしているので、無駄なんて全く無い。二人分のバスタオルと私の着替え、総隊長にはまた私のTシャツと先程買って来てあった下着とズボンを着回してもらおう。にへら、と笑顔浮かべながら総隊長に振り返ると完全な呆れ顏が私を迎えた。ため息吐いて頭に手をやってるけど、諦めたようにお風呂場に向かった総隊長を見て思わずぃやったーー!と声を上げた。










疲れた。どっぷりと。
あの後花子と風呂に入ったワケだが、兎に角俺を撫でまくる撫でまくる。髪は洗われるわ身体も洗うと聞かなかったから背中は任せた。幾ら身体が縮んだと言っても中身は縮んでねェんだぞ分かってんのか。あいつのすべらかな指が髪を、肩を、背中を撫で撫ぜる度に熱が集中していく。何処に、だとかいう愚問はこの際受け付けない。あいつは完全に今の俺をガキだと思っている。風呂に入りたいだとかほざいたのが何よりの証拠だ。前に俺が一緒に入ろうとしたらこれでもかと言う程の警戒態勢から始まり別の部屋で寝るとまでの徹底ぶりの否定を贈った癖に縮んだ俺には毛程の警戒もしない。それどころかウェルカム状態だ。初めてだぞ、あいつから一緒に風呂入りたいとか言われたの。


「ふーわっふわ!やっぱ私の使ってるシャンプーとリンスに敵なんてなかった!」
「オイ、何時まで触ってる気だお前」
「えー、それ言ったら総隊長だってなんで服着ないんですか?もう髪も乾かしたのに、風邪引いちゃいますよ?」


何時までも俺の髪を撫で回す花子の手を掴んで無理矢理引っぺがすと不満の声が聞こえたが無視だ無視。つーか花子もTシャツと下については下着しか着てねェだろ俺のこと言えんのか。それともそろそろ秘薬の効果が切れるだろうタイミングを見計らって誘ってんのか?そう思案した瞬間に、身体に違和感が走った。骨が軋むような、皮膚が突っ張って伸びるような、そんな感覚。地味な痛みを伴うが耐えられない事も無い。


「あ…、…あぁ………」


そんな俺の変化をリアルタイムで見た花子が呻き声を上げる。あぁ、これだ。よく見えるようになった視点、視界に縮んだのは短時間だったが酷く懐かしさを覚えた。グッ、グッ、と掴んだままの花子の手が逃れようと躍起になるが、俺が、散々やりたい放題されて、終いには風呂ですっかりその気にさせられている俺が、この手を離すとでも思ってるのだろうか。


「ヒィイイ離してェ!!そして私の可愛い総隊長を返してェエ!!あとごめんなさいぃい!!あまりにも幼児総隊長が可愛くてェ!つい!つい思うままに行動しちゃっただけなんですごめんなさいもうしませんからァ!!!」
「てんめェ…散々やらかしといてその言葉が通用すると思うなよ、コラ」


いや、良かった。何がって、撫で回されていた場所がベッドの上で。あのまま花子は俺を抱き枕代わりにでもして眠りに就くつもりだったんだろうが赦さねェぞ俺は。


「なぁ、確かに俺は言った筈だな、気絶も赦さねェってよ」
「ひ、ッ」


ギシ、と音を立ててベッドが軋む。体を倒され抑え付けられた花子の目は泳ぎまくってる、その思案の先はどうやったら俺にお預けを食らえさせられるか、だ。絶対。この後に及んでも逃げようとする、何時もと変わらない花子に何処か安堵を覚えたと同時に、先程までは抑えていた熱がまたふつふつと湧き上がってくるのを感じて、自然と口角が上がった。


「さて、俺の身体が戻った記念のお祝いをして貰おうか、花子」


嘘だァ!!そう叫んだ花子の叫び声が熱を孕み始めたのは、少し先の話。




〜後日〜

「ん?」
「何だシカマル」
「いや、お前から花子と同じ匂いが…あー、一緒に暮らしてんならそれもそうか」
「あぁ、シャンプーか」

一人納得したシカマルとそれから機嫌の良くなったナルトに恥ずかしさのあまり突進して行く花子の姿を見た暗部員A視点








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