▼14巻ネタバレあり
▼地味に捏造あり




「「あ、」」


とある日の昼下がり、片手に申し訳ない程度の花束を片手に目的の場所へ辿り着いた私は、先客として居座っていたハンジさんとほぼ同時に声を上げた。視線を目的の、仲間が眠る墓標へ向けると真新しい花束が置かれていた。

「ごめんね、花束先に置いちゃったよ」
「いえ、気にしないでください」
「ん、花束は幾らあっても良いからね」

持ってきた花束を後ろに引っ込めようとする私の動作を制止するように、ハンジさんが手を差し出す。どうやら私の持つ花束も墓標へ飾ってもらえるらしい。ハンジさんの表情は何時もの笑顔とは遠い、幾らか落ち着いたものだった。

「君も忙しいだろうに、お疲れ様。休憩時間、割いて来たんでしょ?」
「いえ、今日は元から来るつもりで居ましたから。…暫く、来れないでしょうし」
「そうだね。これからエレンとヒストリアの奪還に本腰入れるから」

ゆっくりとした動作で、ハンジさんが私の手から花束を取る。そしてまたゆっくりとした動作で、墓標に花束が添えられた。緩やかな風が吹いて、ハンジさんと私の髪が揺れる。
いつの間にか握り締めていた拳に自分で気付いて、力を抜いた。その手を静かに胸元へ持って行き、静かに墓標へ敬礼をする。

ここに、皆の身体は無い。勿論そんなことは分かり切っているし、身体は遺族へ返されるのだから身体が無いのは当たり前なんだけれど。この壁内に残された僅かな遺品を、調査兵団の僅かな敷地内に用意した簡易墓標の下に埋めてあるだけの、私達の自己満足な墓標。遺品と言ったって、朝使い忘れていたのであろう髪ゴムや個人個人の立体起動装置の手入れに使われていた小さなタオル、以前使っていた羽ペンの羽の破片と言った遺品とカウントされるかすらも怪しいものが沢山埋まっている。

「ハンジさんも、彼女のーーニファの、ためですか」

呟いた私の声に、返事は無かった。けれど代わりに私の方を見て一言呟くと、ハンジさんは踵を返して皆の元へ帰ってしまった。

呟かれた一言は、その内私自身にも突き刺さりそうで、胸が痛くなった。


『うそつきだよ、皆』



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ニファだけでなく、ハンジの部下がモブリットしかいなくなってしまったので、俺たちが居ますよ、分隊長!の台詞へのうそつきだよ、です。






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