▼ヒロインかなり罵られてます
▼not無口ナルト


「気持ち悪りィんだよ、お前」

ズガン、と起爆札で心の臟を吹き飛ばされるような感覚を覚えた。まさかずっと影ながら応援していた総隊長にそんな事を言われる日が来ようとは思ってもみなかった。毎日必死に死なない様にハイクラスの任務をこなして、暇があれば総隊長の雑務や書類整理を手伝っていただけでも、気持ち悪い部類に入れられてしまうのか。どんな表情をして良いのか分からず、自然と動きを止めていた手に視線を落とす。

「聞いてんのか?花子だぞ、花子」
「はい」
「…いや、だから気持ち悪い」
「どう反応すればいいんですか」
「あーそれも気持ち悪い。んなもん自分で考えろよ。大体ここまで言われて顔色一つも変えねェとか花子の表情筋死んでんじゃねェか?」
「貴方の言葉ですから。よく考えてみないと分かりません」
「あぁ、それだ。お前クソ真面目なんだよ。」

はあ、クソ真面目ですか。自分に真面目と言う印象がなかった私としては些か納得し難い言葉だったものの、総隊長が言うのならきっと私はそのクソ真面目なんだろう。

「俺が言えば何にでも従う。それが気持ち悪い。」
「私は貴方の部下ですが」
「だからどうした。嫌なものは嫌と言え」
「貴方が下す命になら、嫌と言う概念が生まれません」
「あーめんどくせー」
「…」

貴方が始めに言ったと言うのに。そう思いながら手元にあった書類の整理を再開する。総隊長の方から深い溜め息の声が聴こえた。それと同時に視線を感じ始めたので今度は此方が溜め息を吐いた。

「一体、何だと言うのですか」
「もっと自己表現しろ」
「…善処します」
「無理なら何でも良いから疑問を俺に投げ掛けろ」
「…」

疑問と言われましても。総隊長に対して疑問を抱いた事がない私としてはこれもかなり困るお達しである。…恐らく今の会話の流れでこの書類の期日を疑問として投げ掛けようものなら今度こそクナイが飛んできても可笑しくはないだろう。ここはひとつ、他人の言葉を少々借りるとしよう。

「…では、幾つか」
「何でも来い」
「総隊長は春野サクラをいち女性として好いているのですか?」
「オイ誰だそんなデマ振り撒いたのは」
「違うのですか。では五代目との隠し子疑惑も線は薄そうですね」
「花子、今直ぐその情報の出所を言え」
「輝かしい笑顔で何を考えているのです。言いませんよ」

微かに聞こえた舌打ちを無視しながら書類整理を続ける。やはり所詮は噂だったようだ。これがもし本当の事だったのであれば、総隊長に現を抜かしてはなりませんよと進言する所だった。総隊長の周りには何時も噂が付き纏っている。大抵が根も葉も無い下らないものだけど。

「…そうじゃねェ、そうじゃねェよ花子」
「…はい?」
「疑問を投げ掛けろとは言ったが…ああ、花子には遠回し過ぎる言葉だったか」
「総隊長、お疲れの様なら私は席を外しますが」
「…」
「そんな責める様な表情をされても」
「…お前は歪みねぇな」
「はあ…そうですか」

総隊長からの言葉を理解しきれず、思わず呆けた顔になる。クソ真面目やら歪み無いと言われたのは今日が初めてだ。やはり総隊長の側に居させて貰うと新鮮な事が沢山起きる。椅子の手摺に頬杖を付きながら何やら思案している総隊長からの視線が痛い。何故私を見ながら思案するのだろうか。居たたまれなくなる前に退室するのが得策だと考えた私は手に持っていた書類を机に置いてから座っていた椅子から立ち上がると同時に総隊長が口を開く。

「俺はお前の事が知りたい。ここまで興味が湧いた奴はシカマルやヒナタ以来久し振りだ。だがお前の事を知る切っ掛けが不思議な事に何一つ転がってねぇ。だから気持ち悪い。そこでお前からの質問を切っ掛けにしようとした。それすらも許さねぇお前はある意味何かの才があると思う。が、俺はそれを許さねェ。」
「…つまり」
「俺の気が済むまで対談に付き合え、そして俺の事も知れ」

ええと、これはつまり、その。

「総隊長、もしかして拗ねてますか?」

素直に思った事を告げればニィ、と口角を吊り上げて笑う総隊長。何時も通りのよい笑顔ですが何処と無く苛立ちと羞恥を帯びた気が放たれている。私はどうやら地雷を踏んだようだ。

「おう、俺は拗ねてる。だからちぃとばかし八つ当たりするかもなァ。ま、何はともあれ実践だ実践、何か質問は?」

チリチリとした感覚が身を駆けていくのを感じつつ、総隊長から目を反らして私は小さく「…ご趣味は?」と泣く泣く対談を開始したのだった。




  後日談

「オッス花子、顔色悪いな」
「副隊長…お疲れ様です。」
「そういや昨日は見合いの予行演習でもしてたのか?」
「いえ、そう言う訳では無いのですが」
「そうなのか?」
「あれをなんと表現したらいいのやら…私には分かりませんが、総隊長とあんなに長く話せたのは大変喜ばしい事です」
「良かったなぁ(本当に良かったなぁナルト…)」


シカマルは見守り属性。


130704





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