→今からきみに告白します

 優希くんの好きな所、ですか? ……。申し訳ありませんが、明確に言葉で示すのは、難しいかもしれません。気付いたら優希くんに恋をしていたので。ただ、彼が好きだと気付いたとき、彼は問題を抱えていて、その力になりたいと思ったのがきっかけかもしれません。もう随分昔の話です。高校に入り立ての夏でしたから。

 優希くんは実のところ、それほど「良い人」ではありませんし、だからこそ、月蛙寮の皆さんや私に見せてくれるような穏やかな姿に惹かれたのかもしれません。

 それから、優希くんは少し意地悪です。けれど優しいです。……優しいから、皆さんを思ってあのような行動をとったのでしょう。だから私がそれを止めなくてはいけないと思ったのです。しかし今考えると、あれはただの我が儘だったのかもしれません。私は優希くんを失いたくない一心で、彼を止めたのかもしれません。

 いえ、何でもありません。そうですね、お付き合いを始めてから、笑顔が素敵だな、と思うようになりました。……確かにそうですね。でも、その笑顔とは少し違います。ふふ、これを見られるのはきっと、恋人の特権というものなのだと思います。

 ずっとそばにいて、と言っていただけたので、そうしているのです。私もずっと優希くんのそばにいたいと思っています。離れることは想像もしていませんでした。私は、優希くんのことが好きですから。



「見事なノロケだったね……。ねえ、佐希子」
「うむ。しかし菅野さんのはにかみ笑顔は何年たっても素晴らしいな、ヨッシー」
「オイ会話噛み合わせろ佐希子」
「人妻の菅野さんか……」
「聞いてないし!! それに、もうすぐ『菅野さん』じゃなくなるよ」
「ウェディングドレス姿の菅野さん……」
「話を聞け」
「なあヨッシー」
「何だい佐希子」
「菅野さん、幸せそうで良かった」
「右に同じ」





→終わらない恋になれ

 帰宅すると、彼女はリビングのテーブルに突っ伏して爆睡していた。彼女を守る要塞のように並んだ様々なおかずはとっくに冷め切っている。俺は駅から家まで走ったせいで荒くなった息を抑えるようにゆっくり深呼吸しながら、首元のネクタイを解いた。

 仕事で遅くなると事前に伝えていたものの、こうして用意された夕食と彼女を見ると、申し訳なさでいっぱいになる。ごめんね、という思いをこめて優しく頭を撫でていると、彼女はのろのろと目を開けて、俺の姿をじっと見つめる。そしてふわりと微笑んで、俺の手をそっと掴んで自分の頬に当てた。

「お帰りなさい、私の旦那様」

 甘い彼女の声に誘われて、俺は体を起こした彼女にそっと唇を寄せる。

「ただいま、俺の奥さん」








「初々しい恋10題」
(C)確かに恋だった