※真相千木良ルートネタバレ

※パラレルです。とってもパラレルです。

※ネタを説明しようとしたらネタすらネタバレでした

※幼女風羽たんは俺達のジャスティス

※風羽たんのお母さんをねつ造しています。ご注意ください。たいへんご注意ください。















※「千木良と風羽たんが出会ったとき、風羽たんが浄化体質に変化しなかったら、千木良は幼女風羽たんといちゃいちゃできたってことよね!」という妄想の結果

※千木良がかなり風羽たん大好きで気持ち悪いです。本当に気持ち悪いです。

※千木良←風羽に見せかけた千木良(→→)←風羽です

※この話における千木良はツンをどこかに忘れてきたようです









 風羽のことをお願いしますね、と言われて、烏天狗は仕方なく頷いた。彼は彼女のことを、その手が彼の指をうまく掴めないほど幼く小さかった頃から知っていた。

「分かった分かった。ちゃーんと守ったるから、安心せい」

 水雫が亡くなったのはその会話の数日後のことだった。あの時、はぐらかして「何言うとるん」と言えなかったのは、彼女の手があまりに細く、その声があまりにも切実だったからだ。

 そして今、彼は彼女の娘の面倒を見ている。

「烏天狗殿!」
「お帰り、風羽。ほら、篤尋が戸棚に饅頭用意しとったで。手ェ洗って来い」
「分かりました」

 風羽はランドセルを部屋の隅に置いて、洗面所に駆けていく。彼はぼんやりと庭を眺めながら、風羽が戻ってくるのを待った。すぐにぱたぱたと少女が駆けてくる。手には三つ饅頭が載った皿を持っていた。この寒いのに靴下を脱いでいる。しかしそう思う彼も、靴下が好きではなかった。もしかすると自分の真似をしているかもしれない、と気付いたけれど、だからと言ってどうすることもできない。

「持ってきました」
「おう」
「そちらに座ってもよろしいですか?」
「お前な、そろそろ卒業せい。もう六年生やろ」
「……そうですか」

 あからさまに落ち込んだ様子を見せられて、烏天狗は溜め息を吐いた。風羽は彼のすぐ隣に腰掛けると黙って饅頭の包装紙を剥がす。心なしか、頭の触覚がしょんぼりしている。

「……あー分かった分かった。篤尋がおるときは、そう言うわがまま言わんようになったからな。特別やで」
「! 本当ですか」
「篤尋が帰って来るまでや。ええな」
「はい!」

 風羽は嬉しそうに立ち上がり、胡座をかいた彼の足の上にちょこんと腰掛けた。甘やかすのは良くないと思いながら、烏天狗はこの水雫の忘れ形見にはめっぽう弱かった。

 風羽は自分の背中をぺったりと烏天狗にくっつけて、嬉しそうに饅頭を頬張る。彼も皿の上の饅頭を一つ手に取ると、大きくかじりついた。

「美味しいです」
「せやな」

 幼い膝小僧をこすり合わせながら、風羽は饅頭を頬張る。風羽は最近身長が伸びた。それに伴って、少しだけ表情が大人びてきた。来年は中学生だと考えるとこの習慣も止めなければいけないな、と思う。

「寒いか?」
「平気です。烏天狗殿とくっついているので」
「さよか」

 今こうして烏天狗にべったりの風羽も、いずれ反抗期を迎えてしまうのだろう。それは、何か嫌だなと思う。制服を着た風羽が「烏天狗殿、こちらは私のダーリンです」とどこの馬の骨とも知れない輩を連れてくる様を想像すると、かなりのダメージだ。ダーリンって何だダーリンって。

 烏天狗は風羽の頭をぽんぽんと撫でた。今はまだこのままで良い。ちんちくりんで甘えたがりの子供のままで良い。

「最後の一つははんぶんこしましょう」
「……好きにせい」
「はい」

 半分に割った饅頭の片方を差し出してくる風羽の手から直接それをかじる。咀嚼してごくんと飲み込んでから、もし風羽に彼氏が出来たら、その男もこうして風羽から「あーん」なんてしてもらうのだろうか。それは非常にいただけない。男をひねりつぶしたい。

「なあ風羽」
「何でしょう?」
「男作るとしたら、ちゃんと選ぶんやで」

 少なくとも俺に喧嘩で勝てるくらい、と言うのは胸に仕舞っておく。しかし風羽は首を傾げて、

「私は大きくなったら烏天狗殿のお嫁さんになる予定です」

 今よりもっと幼い頃から繰り返してきた言葉を言う。その台詞を言わなくなるのはいつだろうな、と烏天狗は悲嘆した。成る程、娘から「大きくなったらパパと結婚する!」と言われる父親はこういう気持ちになるのか。

「へーへー、楽しみにしとくわ」

 烏天狗は、彼の生返事に寂しそうな顔をする風羽に気付いていなかった。しかし彼女はめげたりしない。こんなのはもう何年も前から慣れっこだった。

「……ご覚悟を、烏天狗殿」
「何か言うたか?」
「いえ、何も」

 首を傾げる烏天狗を横目に、風羽は残りの饅頭にかじりついた。