2014年7月 夏休み特別版
2014/07/28 23:24
今月はお題ではなくて「浴衣」をキーワードに(珠希が「アンジールさんの浴衣…!」と夏が来るたびにお願いしてた夢が叶った結果)してイラスト二枚とちょっと長い文章です。
イラストはエロではないですがエロいので背後注意ですよ!



月下美人

虫の声がする。
開け放した窓から月の光と夜風が部屋にひっそりと入り込む。
人工的に作られた環境だが、五感には十分に夏の夜の風情を感じることが出来る。
天井からまっすぐに下ろされた朱い組紐。その紐の先にはザックスの太腿がある。膝を折って片脚を上げた横倒しの格好のまま、板の間にザックスはぐったりと横たわっている。

汗で額に張り付いた髪。
虚ろな眼差し。
半開きの唇からは唾液がだらしなく垂れている。
紐の食い込んだ太腿は血の気を失って白さを増し、月明かりの下では青白いほどだ。
室内には甘い芳香と、汗と精液の匂いが混じり合っている。
開け放した窓から吹き込む夜風が少しずつ室内の匂いをかき消していくが、その淫らな香りはザックスの汗ばんだ肌に吸い付いて離れない。

床に撒き散らされた月下美人の花。
窓の外に咲いているものを、アンジールがいくつか手折って撒いたのだ。
白い大輪の花から、細長い花弁がはらはらとこぼれ落ちている。
アンジールはその花の残骸と不自然な格好で縛られたままのザックスの傍らで、一人酒を飲んでいた。
先程までザックスを蹂躙していた凶暴な熱は冷め、香り高いアルコールがじんわりと肌に染み込んでいく。
蒼い夜の底で、無残に手折られた月下美人と荒っぽく蹂躙されたザックスのイメージが重なる。

合意の上でも、アンジールの本気はザックスの理性と肉体を容易く打ち砕いてしまう。
事後、まるで力づくで捩じ伏せられたような無様な姿を晒すことになるのを知っていて、ザックスは常にアンジールに抱かれることを選ぶ。
なにも生み出さない、それは愚かしい行為なのかもしれない。
だがザックスの意志をアンジールは尊重し、手抜きも手加減もせずその身体を抱く。
それが礼儀だとでも言うように。

「儚い恋、快楽、強い意志…お前はどの花言葉だろうな」
虫の声。ザックスの唇は動かない。
アンジールは目を伏せて唇だけで笑い、硝子の酒器を傾けた。


イラストをクリックするとpixivに遷移して大きなイラストが見られます。
縮小率ハンパないのでこちらではサムネで。




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