呼びかける声


「あぁ、ヒトとは、なんと醜く滑稽な生き物だろうか」


何も無い空間をゆらゆらと漂いながら、中性的な声を聞く。この感覚には覚えがあった。いつだったかも、同じ空間にいたことがある。それがいつだったのか、覚えてはいないが。


「思慕と友情に惑わされる愚か者よ、今一度問おう。お前は何者だ」


……、僕は、……。


「答えられぬか」


響く声に、何も答えられなかった。
前も同じ質問をされたような気がする。その時は、何と答えたのだったのだろう。
僕は、何者なのだろう。
ぬるま湯のような感覚の中、自分という存在が溶けて消えてしまいそうな錯覚に陥る。


「ヒトとは本当に醜く滑稽な生き物だ」


嫌悪を向けて来る兵士たち、眉を顰め睨んでくる住民たち、蔑み笑顔を浮かべるサレ。そして、最後に形の無い自分が浮かんだ。


「種族の差。憎悪。嫉妬。歪み。穢れ。……ヒューマでもあり、ガジュマでもある。しかし、そのどちらでもない、曖昧な存在。お前は、世界をその足で歩き、その目で見聞きし、何を思う」

そうだ。その通りだ。
相手を恨み、嫉妬し、傷付ける。歪んでいて、汚ないヒトの姿を、いくつもこの目で見てきた。自分も、そうだ。ハーフである事を憎み、それ以外のヒトに嫉妬し、サレに依存する事でしか生きられず、サレに望まれたいと縋りつき、滑稽で、汚れていて、自分の価値も、存在意義も、何も分からない。


「哀れな愛しい我が子よ、お前は何を望む」


僕は、僕は……ただ……。


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