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女中の逃亡から2日目。
真選組副長と一番隊は、『洗濯物係(前半)』に当たっていた。(前半)は、洗濯物を洗濯機で回し、それを屯所の中庭に干すことを示す。

「うわー、すごく汚いですよ隊長…」

集められた洗濯物を見て、隊士が口を歪ませる。

「その言い方だと俺が汚いみたいじゃねぇか。汚いのは洗濯物だろィ。」

別段汗をかく季節ではないのだが、男所帯というだけでなく、真選組という仕事柄、自然と衣服は汚れる。こんな汗臭いものを毎日洗濯するのなら、女中達が逃亡するのもおかしくはないな。などと、それぞれが無責任に考えた。

「おい総悟、とりあえず洗剤だ。」

「いえっさー。」

ズシャァァァ

「……なんか洗剤が勿体無い気もするが、仕方ないか。」

新品の粉洗剤が全て洗濯機の中に投入された。洗剤の箱に記されている使用量の欄を見れば分かるはずなのだが、多ければ多いほど綺麗になるだろうという単純な考えで全員が洗濯機に水が注がれていく様子を眺めていた。

「よし、とりあえずはこれで大丈夫だろう。おまえらは仕事に戻れ。」

土方の言葉で、一旦解散。ぐわんぐわんと唸る旧式の洗濯機を残して、その場を去った。






「……開けるぜィ。」

数十分後。沖田を中心に、洗濯物係(前半)メンバーが群がる。開けられた洗濯機をそっと覗き込み、彼は目を丸くした。

「すっげー。清潔そうな匂いがしまさァ。」

「いや、ちょっと待ってくださいよ隊長、」

つられて中を覗いた隊士が眉をしかめて洗濯物を取り出した。

「洗剤だらけです。」

いい匂いもするはずだ。あまりに洗剤が多すぎて、通常の濯ぎでは足りなかったらしい。
誰か一人くらい気付いてもよさそうだが、洗濯物係(前半)メンバーは不思議そうにそれを見ている。そこで、土方が意見する。

「このまま干せば、干している間にも汚れを浄化してくれる……とかは違うか?」

「あぁ、なるほど!」

「さすが副長っ!」

「だから洗濯したての服はいい香りがするんだな!」

「土方死ね!」

称賛の声に、案の定混ざってきたどこかの隊長は無視し、土方は満足そうに頷いた。

「じゃあ手分けして干そう。」

次の日、真選組の隊服からポロポロと洗剤が落ちていたことは言うまでもない。



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