「……で、なんでよりによって一回目が、買い出しなんてパシリみてぇな当番なんですかィ。」 隊士の中で一番やる気満々だった沖田は、大江戸スーパーまでの道で一番やる気のない顔をしていた。 「いや……適当に設置したらたまたま買い出しで…」 「あーあ、まったくそんなんだから土方さんは所詮土方止まりなんでさァ。」 明らかに不機嫌な沖田に、土方は困ったように煙草をふかした。 そんな2人の後ろからは、ぞろぞろと一番隊隊士が続く。 普段よりは人数が多く、事件時よりは覇気のない真選組に、市民の注目が集まる。疲れたように進む行列は、まるで遠足だ。 それもそのはず、現在夕方の5時過ぎ。通常勤務が終了したところで、夕飯の材料が足りないと発覚したため、1日くらい食材はもつだろうと予測していた彼等が駆り出されたのだ。 「せめてパトカー使いましょうよー。過酷な労働後の人間に徒歩だなんて冗談キツイですぜ。」 「馬鹿言うな。スーパー行くのにパトカー使ってたら、何台あっても足りねぇよ。」 一瞬膨れっ面をした沖田だが、ここで粘っても意味がないと思ったらしく、暢気な欠伸をして、後ろを振り向いた。 「おーい、お前ら荷物持ちだからなァ。」 自分は全く持つ気がないようだ。 「もちろん!隊長に荷物を持たせるわけにはいかないっス!自分に任せてください!」 大声で主張した神山につられ、他の隊士も頷く(ここで下手に逆らえば大変な目に合わされることは既に学んでいるのだ)。 「さすが一番隊でさァ。そんなおまえらだから、俺ァ信用して戦場に出られるんだぜ。」 満足げな沖田の頭を、土方がぱしんと叩く。 「くだらねぇこと言うんじゃねぇ。おまえ、ちゃんと紙持って来てんだろうな。」 「へい。これでしょ?」 隊服のポケットから、何か書かれた紙を取り出す。 「……総悟に渡すと、なんでもかんでも汚くなるから不思議だ。」 「汚い?あぁ、このシワのことですかィ。」 無造作にポケットに突っ込まれていた紙は、シワはもちろん、破れかぶれになっていた。 「まぁ、ただのメモだからな。それ、なに書いてあるんだ?」 「えー……じゃがいも、人参、肉、カレー粉…って書いてあります。」 土方が、今晩の献立が丸分かりだな、と呟いた。どうやらその紙には、買わなければならないものが書いてあるらしい。 「つーかカレーって、そんな単純な食材で作られてんのか。」 「さぁ。」 首を傾げる2人に、後ろの隊士も口を挟む。 「たまにカツが入ってますよね。」 「そりゃあほら、カツカレーじゃねぇのかィ。」 「あっ、そうですね。」 そういえばカツカレーにしかカツは入ってないですね、と当たり前なことを隊士が言う。 その会話には触れずに、何かに気付いたような土方が声をあげた。 「おい待て、肉ってなんだ。鶏か、牛か、それとも豚か。」 「…………」 「そもそもあのカレー粉の箱って、何個買えばいいんだ。野菜も肉もどれだけ買うんだ。」 「…………」 一同閉口。地面のコンクリートを足が歩く音が響く中、暫く沈黙が流れた。そして、沖田が土方に返す。 「1人1箱じゃないですか?」 「やっぱりそうだよな。カレー粉だけですごい量になりそうだ。」 沖田のカレー粉1人1箱説に賛成した土方と一番隊隊士たちは、スーパーへの歩みを速めた。 男達の戦いは、まだ始まったばかりである。 はじめてのおつかい (男だらけで、レッツ ゴー!) おまけ 「あ!土方さん!箱の裏に材料書いてます!……これ1個で10人前らしいですぜ。」 「すっげ!こんだけで10人前とか得した気分だ。」 「副長、隊長、カレーには牛肉が主流らしいっスよ!」 「玉ねぎが入ってたんですね。」 「……未知の世界、半端ねぇ!」 |