高校生と大学生 | ナノ



「やっぱり大学生だよ!車持ってる大学生!」

クラスメイトの女子が、大声で叫んだ。話を聞いていると、どうやら3年の男子に振られた友達を慰めているようだ。

「大学生?なんの話でィ。」

それなりに絡みのある女子だったから、休み時間のうちにと早弁していた手を止めて聞いてみた。するとその女子は、あぁ沖田、と言ってから説明し出す。

「この子ね、あの先輩に振られたのよ。」

「前にかっこいいって騒いでたサッカー部の?」

「そうそう。年上の余裕がいいんだって。だけどさ、年上でも同じ高校生じゃん。どうせなら大学生だよって。」

「へェ。どうせなら、か。」

どんな損得勘定だ、とは言わないでおいた。女子は、男子には分からない思考をしている。

「だってかっこいいし。」

「高校生にもかっこいい奴はいるぜ。俺とか。」

「やめてあげて!傷付いた心に付け入っちゃだめ!沖田なんか、顔だけなんだから!」

振られた女子は、後ろでぼんやりとしている。よほどダメージが酷かったらしい。それにしても、「沖田なんか」は言い過ぎじゃないか。

「ふーん、やっぱり女子って年上の男がいい人が多いんですねィ。」

私は年下がいいけどね、と言ってから女子A(面倒だから、慰めている方をAとしよう)は頷いた。

「そりゃあ、頼りになるし。車で夜景とか見に行けるし。」

「うっわ、女子好きそう。」

「そういう沖田はさ、彼女いないんでしょ。」

「恋人ならいるぜ。」

そう答えると、女子Aは嘘だと叫んだ。俺の恋人は、この高校にはいないから知らないのだ。それに俺は、そんな話を滅多にしない。

「沖田に!?趣味悪いね、その子!」

「うっせー。」

「で、どこの子なの?他校?」

後ろで落ち込んでいる方をすっかり忘れて、女子Aは目を輝かせた。女子は大学生と夜景と、他人の恋愛話に首を突っ込むのが好きらしい。

「大学生。」

「えぇ!?まぁ言われてみれば納得かも。年上に好かれそうだよね。その性格じゃなかったら、わたし、沖田の顔好きだもん。」

「年下キラーに言われても嬉しくねぇや。」

「どんな子なの?」

俺は、恋人のことを思い出す。
真っ黒な髪、切れ長の目、すっと通った鼻筋。常に煙草の香りをさせていて、かなり短気。

「……そんくらいですかね。」

「沖田好きそう。予想通りですごく気持ち悪い。」

こいつは本当に余計な言葉が多い。女子Aは、彼女さんに会いたいなぁ、なんて言っている。断っておくが、俺は一言も「彼女」とは言っていない。



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