いつものやりとり | ナノ



総悟はよく、突拍子もないタイミングで体の繋がりを求めてくる。あまりに俺の意思を尊重しないことに、嫌だと拒否をするよりも呆然と成り行きを客観視するしかない。もちろん俺は総悟を愛していて、総悟も俺を愛しているのだと信じている。なのでその行為自体は抵抗する対象ではない。それでも、だ。
それはセックスに限らず、キスであったり、ただ手を重ね合わせるだけでも同じだった。
今だって、別にそういう雰囲気ではなかったのだ。ついさっきまで総悟は大口を開けてふてぶてしく惰眠を貪っていたし、俺は終わらない書類に舌打ちを連発していた。もう何本目になるか分からない煙草に手を伸ばすと、いつの間にか起きていた総悟に手首を掴まれ、状況を理解する前にこの様だ。

「うっ……ちょ、む…り、」

ムードも何もない。無理矢理に捩じ込まれた舌を押し返すと、しまった、逆に絡みつかれた。
まじでやめてくれ。書類は終わらねぇし、何よりそんな気分じゃない。おまけに快楽とは程遠い窒息状態。

「はぁ…てめっ、俺の気持ちをちったぁ考えやがれ!」

解放されてすぐに怒鳴っても、総悟はなんでもないように欠伸をかます。

「えー、なに?土方さんの気持ちをー?」

「なんだその嫌そうな面は。」

「嫌だもん。」

「…つくづく勘に障る奴だな。」

小憎たらしい様子で再び寝転がった総悟を横目にため息をつく。
どれだけ寝れば気がすむんだ。

「土方さーん、」

「あ?」

「なんでもねぇ。」

「…じゃあ呼ぶな。仕事中だ。」

そう言えば総悟は、ごろごろと寝返りを打って、快適に睡眠できる体勢を探し始めた。でもなかなか寝付けないらしく、うあーと呻き声をあげて俺の背中を蹴ってきた。恐らくこれは暇だ構えの合図だが、生憎俺は暇ではない。なので無視を決め込んで筆に墨をつけ直す。

「やっぱり暇でさァ…。もう一回ちゅーしやしょうよ、ちゅー。」

「暇だからって俺に絡むな。」

NOと言えどもいつもは聞こえないふりで押さえ込まれるが、今日はその気分でもないらしい。しかし、諦めるでもなく厄介だ。
冷たい態度を貫いていると、後ろからバタバタと暴れまわる音がする。

「いーやーだー!しーたーいー!ちゅーしたーい!」

「う!うるっせぇ!」

恥ずかしげもなく叫ぶ総悟に慌てて返事をする。隊士達に聞こえるだろーが。

「だってしたくてしたくてしたくてしたくて!」

「こういうときだけ大声出すな!」

そんなにしたいなら勝手にしろよ!とか言いそうになって飲み込む。こいつの思うままになってしまうのは何か腹立つ。

「あーあ、山崎とちゅーしようかなー。万事屋の旦那のが上手いかなー。」

「…てめー、」

冗談なのは明白(何故って見事に棒読みだから)。

「でも旦那は受けれなそうだしー…。やっぱ山崎かなー。」

「………」

そうだ、冗談なのは明白なのだ。でも、

「はぁぁー…。本当は土方さんがよかったなー…」

「…分かった!書類くらい明日だけで終わらせてやらァ!」



俺は今日も負けてしまうのだ。



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