「土方さん土方さん、」 真夜中まで書類にとりつかれたのような土方さんを後ろから抱き締めた。なんかもう死にかけたような土方さんは掠れたような声でなんだと応えるだけだった。大変だ、土方さんが死んじゃう。そんな仕事ばっかりしてたら過労死しちまう。気をつかうべきなのだろうけど、正直我が儘な俺にとっては暇だから構えくらいの気持ちにしかならなかった。 「ピザって10回言ってくだせェ。」 どうでもいいから話していたい俺は、下らないことを言ってみる。ピザピザピザピザの勢いで膝をピザと言わせる、あの忌まわしい言葉遊びだ。怒鳴られるかなと思っていると、なんと土方さんはピザピザピザと呟き始めた。 相当やばいな。目がかなり据わっているけど、体力的にも精神的にもやばいだろ。後ろから顔を覗き込んでいると、どうやら10回ピザと言い終えたらしい。え、なんかこの状況であのバカらしい台詞を言わなきゃならないのか。抵抗はあったけれど言うしかない。 「じゃ、じゃあこれは?」 土方さんの膝を指差して聞く。 「…………ひざ。」 ちょっと、それはないでしょう。ピザから頭を切り換えて考えるのは駄目だ。 つーか何、その目は。なんでいきなり膝の話になったんだとでも言いたそうな目。あんた知らないのかよ、ピザと膝って似てるよねっていう悪ふざけにもならないネタだよ。 「…ね、もう寝たらどうですかィ。」 「これ、おまえの。」 ぼんやりと示したそれは、確かにいつか俺が破壊させた建物の始末書だった。 「あれ、本当だ。」 「とりあえず、終わらせるまで寝れねぇ。」 残りの書類をちらりと見て俺はため息をついた。 「無理ですよ、こんな量じゃ何日徹夜しても終わりやせん。」 「分かってる。」 分かってるのに止めないのか。 「明日にでも隊士達に手伝わせたらいいんでさァ。」 「明日になったら考える。」 まだ筆を止めない土方さんを唖然と見つめる。今何時だ、3時?もう明日じゃねぇか。この人は何日寝てないんだっけ。 さらさらさら 俺は昼寝もしたけど眠い。そろそろ寝たい。だけど俺による始末書なんか見てしまったから、亡霊になりそうな土方さんを放って寝る訳にはいかない。 「寝ましょう。」 「寝とけ。」 「…………」 仕方なく俺は土方さんを押し倒した。亡霊まであと一歩な土方さんはすんなり布団におさまる。 「おい、だから寝ないって…」 「だまりやがれ。」 そのまま全体重をかけて目を閉じる。もう瞬間で寝れると思う。遠くなった聴覚で、土方さんも眠りへ誘われるのを感じた。 眠いのに心配なんてできない |