土方さんは分かっていない。 ドS野郎だと顔をしかめて俺を見たって意味がない。俺の思い通りにならないように、眉間に皺を刻んでいても。完璧に落ち度を無くして俺を満足させなくても。それが余計、楽しかったりするのに。 ほらもっと頑張れよ、その変わらない表情を変えてみせるから。もっと俺を惚れ込ませてみろよ。 「ひーじーかーたー…さんっ。」 書類にかかりっきりの背中を抱き締めて、甘えたように名前を呼ぶ。かなり自信のある行動だったのだが、これで焦ってくれる程扱いやすい人じゃないのは知っている。むしろ燃える。 「ったく、邪魔すんな!」 「だって暇なんですもん。」 「もんじゃねぇ!俺は暇じゃないんだよ。」 「遊んでー、かまってー。」 棒読みだけど上目遣い。どうだ参ったか土方コノヤロー。 「うっせー、つーか総悟も仕事溜まってんだろ。」 「今は土方さんと居たい気分なんです。」 「…なんだよそれ。」 あ、今ちょっと目線が揺れた。すぐ取り繕ったけどバレバレですよ。 「土方さーん。」 「………」 「ねーねー、」 「………」 「…土方さーん。」 「………あぁもう何だ!」 「かまって。」 じっと見つめる。きっと土方さんは俺の魂胆を見抜いている。それでも流されそうになって、自分の中で葛藤しているんだ。 「…この書類片付いたらな。」 おっと一歩譲ったぞ。でもそんくらいで満足なんてしてやらない。 「嫌。今すぐ。」 「駄々っ子かおまえは…。」 困り果てたように頭を抱えた土方に口角が上がるのを必死に堪える。 「ね、いいでしょう?今、」 極めつけに土方さんの肩に顔をのっけてみる。しばらく黙っていた土方さんは、諦めたかのように煙草を灰皿に擦り付けた。 「……しょーがねぇ。」 その言葉が耳に届いた俺は、土方さんを押し倒した。 やめられないとまらない (強情なあんたが折れる瞬間に 病み付きなんだ) |