ポテチ生活 | ナノ



課題のレポートを徹夜で終わらせたせいで、洗面所の曇った鏡に映る自分の目付きはいつにも増して最悪だった。そして改善の余地がないことを悟った俺は、毎朝迎えに来るあのドアを叩く音で外へ出た。とは言えこの寮から学校までは数分の距離なので、俺からすれば毎日懲りずに来るこいつが分からない。

ガチャ

「おはよーございやす。」

「おう、行くか。」

履き潰したスニーカを履いて、同じく眠そうな総悟に言う。こいつはいつも不服そうな色を浮かべているのだが、今日はそれが強い気がする。すると案の定、形のよい口を苦々しげに曲げて言った。

「見てくだせェ、にきび。」

「ん?どれだよ…あ、本当だ。」

彼が指差したのは右の頬。
毛穴らしきものが見当たらない真っ白な柔らかそう肌に、ぽつんと赤いそいつはあった。

「あれでィ、最近主食がポテチだったから。」

「自業自得だな。」

そういえば、手料理を作ったことがないと言っていた。こんな綺麗な肌にもにきびなんてできるんだな、なんて思いながら太陽の下を歩く。そして校門までは徒歩10分。

「どうしやしょう、俺、可愛いキャラなのに。」

「どこが可愛いんだよ。」

「さぁ。ほら、あそこらへんの先輩達がそう言うんですよ。」

きゃあきゃあ高い声で女子特有の群れを作る3年生を顎でしゃくった。

「なるほど、あそこらへんなら総悟の本性知らねぇもんな。」

嫌味で言ったのだが、総悟は納得したように頷いた。

「げっ、来た。」

さも嫌そうな顔をしたのは、にきび半分、鬱陶しさ半分というところか。

「沖田くんおはよー!」

「おはよう総悟くんっ。」

「あー、ずるいよ1人だけ下の名前とかー。」

「おはようございまさァ先輩。」

鬱陶しさを微塵も感じさせない笑顔で総悟が挨拶をすると、3年生はきゃぁぁと騒ぐ。こいつは絶対に年上キラーだ。

「あ、沖田くんにきびできてるよ。」

見事に指摘をしたのは背が高くて細い茶髪だった。

「そうなんですよ。」

「かわい〜い!お年頃だもんね!」

何故かまた盛り上がった3年生にげんなりする。お年頃って、てめーらも変わらねぇだろ。

「先輩、お年頃っつーかポテチばっか食べてたからでさァ。」

「やだもう超可愛いよ!」

「沖田くん私んち来なよ!毎日ごはん作ってあげるーっ。」

そうだ、勝手にしとけ。俺は先に教室行っとくから。そう言おうとすると、がっしり腕を掴まれた。

「すいません先輩、俺、今日からこいつの部屋で生活するんで。」

「……は?」

さっきまでは俺が茅の外だったのに、次は女子生徒がとりのこされる。

「もうポテチ生活は飽きたんで、あんたと住めばいいかなー、と。」

「いやいやいや、」

「じゃ、そういうことなんで。また会いやしょう先輩。」

「おいィィィィィ!」



ポテチ生活
(どうなる、俺の青春!)