理由なんてないけど | ナノ



夢を見た。
どこで、だれと、なにをしていたのかさえ覚えていないが、夜中の3時に目覚めて、急に不安になった。なんだかモヤモヤが晴れなくて、仕方なしにアイマスクを外して寝るのを諦める。漠然とした不安の中で、何故だか浮かんだのは黒髪のあいつだった。それに気付いた俺は、Tシャツにジャージというだらしない姿で、まだ暗い外に飛び出した。肌寒いのを気付かないふりして、徒歩10分の距離を走る。
通い慣れたあいつの住むアパートは、この時間に来るのは初めてで、全く知らない場所に来てしまったような感覚に襲われる。それでもかろうじて残っていた冷静な自分が、確かにあいつのアパートであることを肯定した。
がちゃがちゃドアノブを動かして強引に入ろうとするが、失敗。理由もなく焦る俺は、力任せにドアを叩く。しばらくして部屋でバタバタ暴れる音がして、ドアが開いた。俺を見た途端に、そいつは眠そうな目を見開く。そのあといきなり抱きついたのは、自分でも訳が分からない。



理由なんてないけど