何がいけなかったのか、と考える。結論が出たところで、そこから今までのデータを保存せずに強制終了、再起動させてやり直し、なんてことができるわけない。分かっている。 何がいけなかったのか、と考える。脳みその中身が空っぽだから、働かせようとは思ってみてもからんからんと空しい音が聞こえるだけだ。そのくせ、なぜだか疲れて頭が痛い。 何がいけなかったのか、と考える。考えることが難しいから、結局いつも同じ答に辿り着く。つまりあの人が悪いのだ。 いくらなんでもあれだけ飲んだら潰れるに決まってんでしょ、と聞こえた。エコーがかかったようにその声が頭で響いて、天からのお告げみたいに感じたけれど、この声の主はどう聞いてもお天道様なんかじゃなくて山崎だった。 ごろんと畳に転がされた感覚がしたので目を開けてみる。やはり、地味で冴えない顔が見えた。 「あっ、起きましたね。ほんと勘弁してください、あんた重いんですから。」 ぼーっとしたまま記憶を辿る。小さな攘夷グループをひとつまとめて捕まえたことを口実に、飲み会が始まったところまでは覚えていた。近藤さんが志村姉への愛を泣き叫び、その隣で土方さんがつまみにマヨネーズをぶちまけていた。いつもの光景だ。 「うーん……そういや、いつもより飲んだ気がしまさァ。気分は全然悪くないんで心配無用だぜィ。」 文字通りの重労働でへたりこんだ山崎に向かってピースを作ってやる。不満そうなのがいただけない。 「心配なんてしてませんよ。沖田隊長、明日は非番じゃないですか。」 「なるほど普段は仕事の心配してたんだなお前、死ね。」 山崎は一瞬慌てた様子を見せるが、今の俺は恐れるに足りないと判断したのか落ち着きを取り戻す。 「何にせよ、あんまり自棄にならんでください。」 自棄になんてなってねえよ、と返しても納得していないらしい。疑わしげな、責め立てるような、そんな視線が煩わしい。これだから山崎は! 「もういいから寝せろ。いつまでここにいる気でィ。」 「はいはい、出ていきますってば。」 よっこいせ、の効果音つきで山崎が立ち上がる。部屋の外に出てから襖を閉めかけた山崎に、言葉を投げ掛ける。 「さんきゅー、あいらびゅー。」 「……」 「どぅーゆー?どぅーゆーらぶみー?」 「……それ、別の人に言ってあげたらどうですか。きっとあの人、暴言吐きながら喜びますよ。」 空気の読めない山崎がさらりと返事を寄越し、今度こそ襖を閉めた。 あの人に愛してるだなんて、口が裂けても言えそうにない。全部全部の原因をあの人に被せて、それで俺は安心している。 責任転嫁 |