背中から暖かみ | ナノ



少年が、布団にダイブした。

布団からはくぐもった呻き声がする。

「ってぇ…なんだよこんな時間に…」

先客…というよりも、この布団の主である土方が暗闇に目を凝らす。この暗闇でも分かる蜂蜜色の髪の毛を気付き、ため息をつく。もとより人の布団に無遠慮かつ突然飛び込んでくる厄介者は1人しかいない。

「総悟てめー、俺の僅かな睡眠を邪魔すんな。」

「土方さん…今日はここで寝る。」

「馬鹿か。絶対おまえ蹴るだろ。」

今までの経験上、総悟の寝相の悪さは知っていた。

「嫌でィ。」

「即答かよ。頼むから。」

「俺も頼みまさァ。何にもしねぇから…」

「当たり前だ。わざわざ言うことじゃねぇよ。」

未だ布団から出るつもりがなさそうな総悟に、もう一度ため息をつく。

「つーかなんで俺だよ。近藤さんとか山崎とかいるだろ。神山なんて泣いて喜ぶぞ。」

面倒ながらも追い返そうと説得する。

「近藤さんは加齢臭。ザキは…いい。神山は襲われまさァ。」

山崎はいいって、哀れだなあいつも。

「だからって俺か。煙草臭くなるとか言えよ。」

常日頃言われている言葉を寝ぼけた頭で思い出して言う。

「……今は土方さんがいい。」

ぴとりとひっついてきた背中からの温もりに目を閉じた。

「仕方ねぇな…蹴るなよ。」

「えぇ、多分…」

同じく寝ぼけたような声で返した総悟が布団をかぶり直した。土方は苦笑をこぼしながらも、幸せを感じて眠りにつく。



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