ぽつぽつぽつ、雨が鬱陶しい。瞬きする度に視界をちらつかせるので、気になって仕方がない。 寒いんだか暑いんだか分からない気温が鬱陶しい。体育で筋肉痛になった腕が鬱陶しい。 「意味わかんねぇよ。」 沖田は、知らぬ顔で空を眺めている。 「意味、わからねぇんだよ。」 雨の音で声が届かなかったのかもしれないと思い繰り返したが、沖田は反応しない。故意に無視しているようだ。この屋上から見える景色を、雨を防ぐように伏し目にして眺めている。茶色の髪が雫を滴らせ、整った無機質な彼の表情を濡らす。もう、何もかもに腹が立つ。 俺が懲りることなく沖田の返答を待っていると、ようやく彼は視線を上げた。標準よりも大きな瞳が俺を捕える。 「俺には、あんたがわからねぇ。」 そう言ったきり黙りこくって、じっと目が合う。沖田が何を考えているのかさっぱり理解できない。それが怖くて、つい目を逸らした。 「ねぇ土方さん。俺はどうすればよかったんですか。これからどうすればいいんですか。」 制服が水を含んでずっしりと重い。家に帰りたいと、ぼんやり思った。こんなことは、うんざりだ。 今度は、俺が沖田に返事をしない。返事になる答えが見つからない。 無言のまま、びしょ濡れになったカッターシャツの腕で頬を拭った。そんな俺の行動は無駄だったらしく、途端に雨が降り注ぐ。 「俺には、あんたはわからねぇ。相手の気持ちを考えろとかよく言われたけど、考えても、どう頑張っても、俺はあんたじゃねぇから。」 沖田にも同じく、雨は降り注ぐ。このままだと二人とも風邪をひいてしまうだろうが、今はそんなことはどうでもよかった。 ため息を吐いて、上履きで屋上の地面を蹴った。アスファルトから離れた僅かな砂が、湿ったような音をたてた。しかしそれを掻き消すように、雨はだんだんと大粒になっていく。 「きっと、どうしようもないんでしょうね。だけど、そう割り切れることじゃないんですよ。」 どうすればいいのか、と沖田は言った。しかし俺も、自分がどうすればいいのか知らないのだ。 互いが自分自身すら掴めていないのに、相手を思えるわけがない。この会話に終わりはないな、と悟った。 「なぁ、沖田……」 「俺は、」 ようやく出した俺の声の上から、沖田が重ねた。 「あんたが好きなだけなんだ。」 彼は屋上のフェンスを握っている。その右手に力が入った。どくんと心臓が鳴る。 落ちてくる雫が、ゆっくりに見えた。 平行線の終わるところ (雨はそのうち止むそうだ。 なのに、雲が晴れる気配はない。) |