日常にありがとう | ナノ



「「「……ごめんなさい。」」」

真選組のトップ3、近藤、土方、沖田。その三人が畳に正座をして頭を下げた。襖の隙間から様子を窺う数人の隊士達は、彼らの後ろ姿を応援する。

「今更謝ったって遅いのよ!わたし達がどれだけ大変な思いをしていたか、少しは分かったでしょう!」

「よく分かりました。だから、どうかこれからも僕らのことをお願いします。」

完全に下からの近藤に、土方は呆れる。が、事は重大だ。なんとしてでも女中に仕事を復帰してもらわなければならない。

「男はいつだってそれよ!困ったら口では謝るけど、その場かぎり。次の日には知らん顔じゃない!」

「そんなことありやせん。ちゃんと反省してまさァ。」

若干キレかけていながらもそんな様子は見せず、沖田は冷静に返す。彼は、とにかくカレー地獄から抜け出したいらしい。
女中は家事ボイコットを決め込んだ妻のように、三人を睨む。

「本当かしらね。ちょうど四年前にも、あなたはそう言ってたけど?」

四年前には、まだ真選組はできていなかったのだが、そのことについては誰も触れない。
ついに土方が、動く。

「今まで手伝いもせずに迷惑ばかりかけていたことは、本当に悪かった。俺達だけではどうしようもないから、戻ってきてほしい。」

近藤は感動の表情を浮かべ、沖田は白けた表情で土方を見る。女中はというと“あの”副長がストレートに謝ったことに驚いた。

「まぁそんなに言うなら、嫌だとは言わないけど…。」

相変わらず3人を睨んでいる彼女達だが少しの隙を見せたので、近藤が今だと声を弾ませた。

「本当ですか!?ありがたい!これからは何でも言ってください。お互いに支え合ってこその仲間だ!」

「そうでさァ。できることはしますぜ。」

「これで一件落着だな。仕事に戻ろう。」

半ば強引に話をまとめ、それぞれが立ち上がる。やっとまともな生活がおくれると、男達が安堵の溜め息を吐いた。



日常にありがとう







(後日)

「すみません。安売りの卵が売り切れてたので、卵はないんです。」

「卵がないのに、どうやって親子丼を作れっていうの?」

「え、っとー…」

「隣町ではタイムセールだから、そっちで買ってきてちょうだい。五人で行ったら、十パック買えるから。」

「……隣町っすか…。今から内勤なんですけど…」

「何か言ったかしら。」

「言ってません行ってきます。」


END