もうカレーはうんざりだ | ナノ



「過労死しそうでさァ。」

何の脈絡もなく呟いた沖田に、土方は溜め息をついた。確かに土方自身も、疲労がたまっている。普段から疲労の固まりのような土方だが、女中のいない日常生活をカバーし、その上真選組全体の指揮が増えるとなれば、いくら時間と体力があっても足りないほどだった。

「こんくらいで死ぬ奴がいるかよ。」

沖田といえば普段から大して働いていないのだが、それが日常となっていたので、ここ最近の生活はなかなかしんどいらしい。それを分かってはいても、同情するわけにはいかない。
素っ気ない土方の返答に不満そうな沖田は、半分しか開かない目で空を見た。
慣れた市中見廻りでも、いつもよりどんよりとした気分だ。

「それに毎日毎日毎日、カレーばっかり食べてるじゃないですか。このままだと、隊士全員が体悪くしますぜ。」

「それは思う。しかし、惣菜を買うにしても予算がなぁ…」

数日のことではあるが、確実に真選組の隊士は弱っていた。体力的にも精神的にも。

「上に掛け合ってくださいよー。俺、朝は味噌汁を食べないと調子が出ないんで。」

「レトルトがあるだろ。自分で作れ。」

「えー、レトルトと手作りは違いますよ。やっぱり手間隙かけて作ってある料理はうまいじゃないですか。」

「年寄りか、おまえは。」

それでもなんとかしなければと煙草の煙りを吐き出す土方を、後ろから呼ぶ声がした。

「副長!」

声の主は、女中の逃亡にいち早く気付いた監察、山崎だ。

「どうかしたか。」

「ついさっき、女中が戻ってきて……!」

「まじですかィ。やったー、これでまともな飯が食える。」

手放しに喜ぶ沖田に、山崎が複雑な顔で言った。

「それが…めちゃくちゃ怒ってるんですよ。」



もうカレーはうんざりだ