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「ひーじかーたさーん、」

ポテチを一袋と炭酸ジュースの一リットル入りペットボトル。そしてガラスのコップを一つ(もちろんこれは、俺がジュースを飲むために使う。土方さんのコップはいらないだろう)。あれ、土方さんの部屋ってドアじゃなかったっけ?襖を開きながら考えると、土方さんが驚いたような顔で俺を見た。すぐに俺も、驚いた顔をした。

「……総悟?」

「総悟ですが。一体、この数分の間にあんたはどうやって模様替えをして着替えたんですかィ。」

いつからこの部屋は和室になったんだろう。部屋着にしてはかっちりしすぎたスーツみたいなの着てるし。しかもさっきまで禁煙するとか言ってたのに堂々と煙草吸ってる。灰皿には何本もの吸い殻。あんた一応高校生だろう。
しかし、混乱しているのは俺だけではないようだ。

「総悟、あんだけ仕事サボるなって言っただろうが。つーか何だよその服。勤務中にふざけてんのか、今すぐ脱げ。」

「きゃー、土方さんったら大胆でさァ。今日はお母さんいるからイヤだって、自分が言ってたんですぜ。」

まぁ土方さんがいいなら、俺としては全然いつでもオッケーだけど。

「何を馬鹿げたこと言ってんだ…おままごとなら山崎とでもやっとけ。俺を巻き込むな。」

「おままごと?それに山崎も呼んだんですかィ。それなら近藤さんも呼びましょうや。」

若干、いやかなり噛み合わない会話をしながらも、俺は携帯をポケットから取り出した。あー、近藤さんはストーカーで忙しいかも。
近藤さんに電話をかけていると、土方さんがじーっと俺を見てきた。

「……趣味の悪い携帯だな。プライベート用か?」

近藤さんは、電波の届かない場所にいるみたいだ。おかしなことを言った土方さんを、今度は俺が見る。

「これ、一年以上使ってるじゃないですか。」

ショッキングピンクの携帯は、確かにたまには趣味が悪いなと自分で思うけれど、何故だか一年前には気に入って選んだものだった。

「は?知らねーよ。近藤さんなら、こっちの携帯に入ってるだろ。」

ぽんぽんと土方さんが指差したのは、黒に変な模様が入った携帯だった。そういえば、彼が着ている服と同じ模様。

「その携帯の方が、断然ダサいと思いますよ。」

正直な感想を述べると、土方さんは地球外生物を目の当たりにしたような顔になった。記憶喪失がどうの言っている。

「言っときますが、記憶はちゃんとありますぜ。土方さんがマヨラーなことも、土方さんがヘタレなことも、土方さんが俺より剣道弱いことも憶えてますから。」

「弱くねぇ!」

とりあえず最後の言葉を否定した後、土方さんは頭をかかえて悩みだした。それにしても、土方さんの隣に置いてあるのは本物の日本刀なのかが気になる。でも本物なわけないか。やけに凝ったやつ持ってるんだなこの人。

「ねー土方さん、ゲームはどこにしまったんですかィ。さっきの続きしましょうよ。」

「近藤さんの所へ行くぞ。」

決心したように言った土方さんが、俺の腕を掴んで立ち上がった。土方のくせに偉そうだ。

「えぇー、早くクリアしてぇのに。」

ぶつくさ言いながら部屋から出ると、そこは土方さんの家ではなかった。

どこだよ、ここ。



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