「どうやら、洗剤は一度に一箱使うもんじゃなかったようです。」 一番隊と土方が『洗濯物係(後半)』の仕事をはじめようと集まったところで、沖田がきちんと使用量を守って洗濯された衣類を指差しながら報告した。 「山崎もそんなこと言ってたな。そうならそうと、箱のどこかに書いといてくれりゃあいいのに。」 土方はそう言うが、箱にはきちんと書いてある。しかし、それに気付く隊士がいないのは分かりきったことである。 仄かに洗剤の香りがする洗濯物を、沖田が縁側にばらまいた。 「よっしゃてめぇら、どうでもいいから適当に畳んでいくぜィ。」 各々が、畳みやすそうな隊服のシャツなどから取りかかる。不器用な手付きではあるが、なんとか順調に事は進む。真選組の隊士が縁側に正座し、黙々と洗濯物を畳んでいる様子は、少しばかり不気味だ。けれどそのうち、全員の手が止まる。自分のものだけを畳み、他の隊士のものが残っていた。 「……なんか嫌ですね。他人の下着を触るのって。」 ぽつりと呟いた隊士の言葉に、頷く。 「置いといたら勝手に持っていくんじゃありやせんか?」 これで俺の役目は終わりだと言わんばかりの沖田を、土方が咎める。 「ちゃんと洗濯してあるんだから大丈夫だ。おら、さっさと済ますぞ。」 はじめは渋っていた一番隊一同だったが、そろそろと作業を再開する。が、そこで事件は起きた。 「あれっ!?副長、なぜか女物の下着が一式あります。」 埋もれていたそれを取りだし、1人が叫んだ。まさかと思って見ると、本当にあった。いたって普通のデザインだが、真選組に女物の下着だなんてありえない。 「うわ、本当でさァ。俺はもっと派手なやつが好きなんですが。」 「えぇー。純粋っぽくていいじゃないですか。」 「馬鹿か。純粋そうな下着つけてる女が、まじで純粋なわけねぇだろィ。」 「でも派手な子よりは純粋でしょう…なにより可愛いし、」 「おまえらの好みなんざ、聞いちゃいねぇんだよ!なんであるのかが問題だ。」 本腰を入れて討論しはじめた男達に土方が怒鳴る。 「隠さなくていいんですよ土方さん、あんたがそういう趣味を持ってることは、みんな知ってやした。」 「なに言ってんだ!誤解を招くような表現すんな!」 そんな2人の会話をBGMに、隊士隊は考える。結果、誰もが1つの結論へとたどり着いた。 「局長じゃないですかね…」 「そ、そうだな…」 妙な雰囲気につつまれた縁側に、「あれー?どこにいったんだ!?俺の宝物がァァァ。」という近藤の声が聞こえ、そこにいた全員がため息を吐いた。 下着泥棒は立派な犯罪です (絶対にしてはいけません。) |