とける、の可能性について
解けない謎、迷宮入り。
「いつまでやってるんだい」
「全部終わるまで…」
湯船に浸かりながらフリーペーパーに掲載されていたクロスワードパズルと格闘すること三十分弱。四つだけ埋まった紙面をペンで叩き問題文とぼんやり睨めっこ。
「一向に解けてない」
「大丈夫、絶対解ける」
狭い湯船に入ってるのは私だけじゃない。竹中さんが顔とヒレを水面から覗かせ呆れた視線をよこしているのは分かっていた。
「出てから解けばいいじゃないか」
「分かってるよお」
「俺は出るよ」
「おやすみい」
「……」
あとちょっとなんだ、ちょっとで解けそうな問題の糸が上手くほぐれない。洗った髪もほとんど乾いてきた。
「おっぱい触るな」
「吸っていいか?」
「早く出なよ。湯船が出汁になるから」
沈んでいく竹中さんを後目に私は紙面を叩きリズムを刻む。いつになったら、とけるだろう。