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お腹が空いて困ることは沢山あるけれど、なかでも困るのは一日を過ごす上でのやる気がどうにもわかない時だ。瞼は自然と重くなるし言葉数も少なくなりしまいには必要最低限な動きさえも止めてしまう。ついには体が二つ折りになった頃、私の隣でテレビに釘付けだった静雄が動きだす。

「さっきからお腹鳴ってるののだめか?」

「おそろしいほど気付くのが遅い」

「出前取るから、ピザと弁当どっちがいい。寿司はなしだ」

「出前じゃこの空腹には間に合わない。静雄に作ってほしい」

「自分で作れよ」

「私はお腹が空いている。ここは静雄の家。ほら答えが見えてきたでしょ」

「さっぱり分かんねえからもう寝ろ」

静雄の適当そうな顔を見るに、作ってもらえる可能性は限りなく低そうだ。背中にしいていたクッションを隣に置き直し、言われた通りに眠ることにした。少し居眠りでもすれば空腹も紛れるだろう。静かにクッションへ頭を下ろし視界を閉じようとしたちょっとの間。嗅覚を呼び起こさせる甘い匂いが飛び込んできた。

「トムさんから貰った菓子。あったの忘れてた」

口元に現れた四角いマーブルのクッキーに、持っていた静雄の指ごと噛じりついてしまった。甘くて、しょっぱい味がする。はにかみを抑えている静雄の顔を見て、私は赤ん坊のように指を吸ってやった。