寄り添う庭




「いい加減、僕の家で勉強するのやめなよ」

「私のことは気にしなくていいから。出かけちゃってもいいよ」

「そういうわけにはいかないの」

携帯カメラで窓からの景色を切り取る作業を止めない彼女をベッドで寝そべりながらのほほんとした頭で眺めていると、自分の方へ向けられた撮影音に不意をつかれた。愉快につり上がる彼女の瞼と眉毛。

「勉強しなよ」

「気にしないで」

「そういうわけにはいかないから」

枕を手繰り寄せて顔を擦りつけると僕の本音がみるみる掘り出されていく。片目の視界で盗み見る彼女に心の期待を照らし合わせて切ない気持ちを蓄える僕はどうしようもなくかっこ悪い。

「あぁ、おっぱい触りたい」

「何か言った?」

「言ってないよ」

心の底で反響する悲鳴が外に漏れてしまったようだ。自分も携帯で気を紛らわそうと思いネットを開いたが、駄目だ、無意識のうちに親指がカメラ機能を起動してしまっている。でもこれならバレることなく彼女を見ることができるだろうと躊躇なくズームをした。

「妹子、おっぱい触りたいって言ったでしょ」

「えっ!」

のだめの衝撃的な一言と重なるシャッター音。すかさず僕の携帯は取り上げられてしまい意図せず撮影された画像は彼女の前に晒される。

「ほら、胸撮ってる」

「ちが、違うから!」

「何が違うの」

「それは頼まれた。頼まれたんだよ」

「誰に?」

ベッドに寄りかかりのだめの胸が強調されて僕は瞬きを繰り返し唾を飲む。のだめの表情はいやに挑戦的だが頬は赤い。

「僕に…」

なんてかっこ悪い、僕はもうだめだ。