いしだくん
「おいスケベ女」
三クラス合同授業というものがある。今、私達はその授業の真っ最中の筈だったのだが、おかしなことに担当の利家先生が姿を現さない。
前の席のいつきちゃんがしきりに「下痢だべ、下痢だべ」と繰り返しているから、その説を信じてみることにした。
そんな、先生のいない暇を睡眠で潰そうと思っていたのに、隣の元親君が茶々を入れてくるのだ。今日は規定のTシャツを着て、ワイシャツから乳首は透けていない。あの乳首が私には妙に気になる。
「何を根拠に…」
「近所の小汚ねえ喫茶店で石田とイチャついてたじゃねえか」
「いっ、ちゃついてなんか…ない」
「お前らやっぱ付き合ってんだろ?」
幸村君から大きな破裂音が聞こえてきた。
「佐助ェェェ!やはりのだめ殿は石田殿にホの字でござるァァァ!」
「うん、旦那が裏拳してくるからのだめちゃんの反応が何も見えなかった」
だらしなく私の方を見ながら元親君が問い詰める。そういえばあの喫茶店、正面はみんながたむろするファミレスだった。これは失念していた。
「どこをどう見たら付き合ってるように」
「まあ、まずは石田んとこでお前働いてるだろ。もうエロい」
「佐助ェェェェェェ!」
「揺らさないで。俺様の所だけ地震が起きてる」
「…どこがエロに繋がるの?」
「そりゃあ、お前よ、あれだろ。ご奉仕する立場だろ、石田に」
「乳首最低」
「あぁ?どこ見てんだ。やっぱお前はスケベだぜ」
「さあぁぁぁすけェェェ!透ける乳首とは何事ぞぉぉ!」
「一人で何の話してるの旦那?」
見えもしないワイシャツの上から、ほんのり胸を押さえる元親君。今日の献立は何にしよう。