ねえ、先生
「あけおめことよろボンバー!」
「のだめ何だそれは」
「高杉先生が好きそうだと思って10円饅頭と一足お先に新年の挨拶を!」
「何を買収するつもりで来た」
「学校が始まったら無条件で私と服部先生の為に保健室貸してください」
冬休みでも補習で学校登校の私です。高杉先生はやり残しという名のサボリが祟り、休みなく保健室でパソコンと睨めっこです。
「銀八の教室でも使ってろ」
「嫌だ!私は保健室が良いの」
「どんな理由があってだ」
「保健室での禁じられた逢瀬とかってスペシャルメモリアルじゃん…」
「今時の学生が"逢瀬"とかドン引きだぞ。帰れ」
けど10円饅頭は置いてけ来年もよろしく、と私をちらりとも視界に入れることなく手を振る高杉先生にイラつきが止まらない。正直言ってパソコンの主電源抜いてやりたい。
回転椅子を蹴ってやる為に標準定めていると突然の浮遊感。誰かの腕が腰に回っている。
「何やってんだ、お前」
「服部先生…!私、今の今まで高杉先生に身包み剥がされるとこだった」
「そうなのか?」
「もうボールペンが椅子に刺さってるんだ、聞くんじゃねえよ」
三本のボールペンが高杉先生が座る椅子の背もたれに乱れることなく突き刺さっていた。服部先生は日本史のグータラ教師の癖に時折、並外れた反射神経と運動神経を見せてくれる。そこがギャップ萌えと言うのかもしれないと最近気付いた。
「こいつが保健室をホテル代わりにしようとしてたから注意してたまでだ」
規則正しいマウスのクリック音を崩すことなく高杉先生は言い放った。眠そうな目が更なる苛立ちを誘う。
「そんな意味で言ったんじゃなくて、私はもっと乙女的な意味で…!」
「何が乙女だ。考えてることがゲスいんだよ」
「もう嫌だ。服部先生、あの勘違い鬼太郎に風穴あけてよお!」
私をそっとおろすと頭を撫でてくれた。その顔は笑いが含まれていて私は何だかちょっと悔しい気持ちになった。
「お前がそんなに俺といちゃつきたいだなんて分からなかったよ」
「い、いちゃつきたいとかじゃなくて、私はゆっくりできる場所が欲しいなって…」
「高杉がいたって、ここでゆっくりはできると思うぜ?何せ、今は自分の女の事で頭一杯らしいからな」
「うるせえ!何でお前が、それを知ってんだよ」
「高杉先生やっぱり彼女いたんだ。何人?」
「一駅に一人はかたいだろうな」
「お前ら揃ってゲスだよ」