明日は
「沖田元気ないじゃん」
放課後、誰もまだ帰ることなく教室でそれぞれの時間を共有している中、沖田は傘立てにだらしなく座り、顔は上の空だった。
肩を小突いてやれば太ももを叩かれる。生足が悲鳴を上げて痛みの色を浮かべていた。
「何すんのさ」
「のだめの馬鹿」
「馬鹿じゃないよ」
「じゃあグズ」
「何をもって私がグズなんだよ」
やっと視線がかち合った時には、すこぶる機嫌の悪そうな表情がお目見えして、これは関わらないが吉だと立ち去ることに決めた。
「私は帰るから」
「へいへい、とっとと帰りやがれ」
「そのはずなんだけど、これ何だ」
固く握られたスカートの裾が私の帰宅を許さない。これを無視して進んだら私のスカートが脱げてしまう。
「帰るから」
「帰んなせえ」
「ねえ沖田さ」
「何でい」
「うざい」
即座にスカートから離れた手と沖田の可哀想な顔が妙にマッチしてしまい、今度は私が宙ぶらりんの手を掴んでやり引っ張った。
「帰ろうぜ、沖田」
そうやって素直に頷いた方が可愛げがあると言った日を境に、余計にうざくなったから困るのだ。