少女A
「ところで私はどうしたら良いのかな」
「そこ、座ってください」
暖房がきいてる部屋は何だか熱に巻かれているみたいで不思議な気分になる。二人向かいあって座ると、保健室で初めて喋った時のことを思い出した。
「何を、話したらいいのか」
「うん」
「好きなものは」
「えっと…河合君」
河合君怒ってる。けど顔は赤い。
「ご、ごめんなさい」
彼は事務椅子をゆっくり走らせると目の前にやって来た。殴られると思ったらまるで、犬がやるように肩口に顔を埋めてきて、私はどうしたらいいのかさっぱり分からなかった。
「まともに女子とこうして話すのは初めてなんです。勘弁してください」
私もこんなことを男子からされたのは初めてだ。
「だから、簡単に僕が好きだなんて言わないでください」
「…はい」
それから間が空いたと思ったら、何の違和感もなく小さいキスをした。おかしい。おかしいんじゃないかな。
「僕と根岸さんは友達です。何をどうすればいいですか?」
まず友達同士はキスなんてしないよ、と言わない私は何でしょうか。