俯いていたいお年頃




「黙ってちゃ分からないよ。何で怒ってるの?」

ヒールの音を荒く響かせて、なるべくイルミさんの言葉はまともに取り合わないよう努めることにした。死体の中から頂いてきたカシミアのコートを握りしめても気は晴れない。

「白々しい」

「あ、喋った」

「そりゃ生きてますから」

「本当に?」

「人間ですもん」

「生きてるからと言って、それが人間だとは限らないよ」

大きくため息を吐いた。ヒールを脱いで後ろを思い切り振り返れば、すまし顔が私をじっと見つめている。力任せに投げつけたヒールをイルミさんは避けるでもなくキャッチした。

「ななこは化粧しない方がいい」

「さいですか」

「そのままのななこが可愛いよ」

「白々しい」

とても、すごく、薄ら寒いイルミさんの言葉なんてまともに聞いてはいけないとさっき自分に言い聞かせたばかりだろう。それでも耳を傾けて興味をそそられてしまうのは何故なのだろうか。癪に障る。

「おかしいなぁ、ヒソカはこれで一発だって言ってたのに」

「ぼそぼそ喋るのやめてください」